年金の受給を65歳から70歳まで繰り下げることで、年金額を42%増やすことができる。しかしデメリットもある。ファイナンシャルプランナーの深田晶恵さんが「繰り下げ受給」が向く人、向かない人の判断基準を示してくれた――。
砂時計と積まれたコイン
写真=iStock.com/busracavus
※写真はイメージです

働く女性の場合、繰り下げ受給のデメリットは少ない

前編(「女性のほうが長生きなのに老後資金は少ない」年金を自分で増やす3つの方法)では、働く女性の年金額が全般に少ない要因について解説した。少ない年金を増やせるものなら、増やしたい。後編では、最近話題を集めている「年金の繰り下げ受給」について、「向いている人」「向いていない人」を見てみよう。

年金の繰り下げ受給のメリットは、「年金額が増えること」。一方、注意点はいくつかある。

(1)手取り額は額面と同じ割合では増えない

年金額が増えると、税金や社会保険料(国民健康保険料、介護保険料)も増えるため、手取りベースでみると額面と同じ割合では増えない。

(2)遺族厚生年金は増額にならない

夫が繰り下げ受給をして年金額が増えても、夫の死亡後に妻が受け取る遺族厚生年金は増額にならない(妻が受け取る遺族厚生年金は夫65歳時の年金額を基に計算される)。

(3)「加給年金」が受け取れない

妻が年下の場合、夫が「加給年金」を受け取れるが、夫が繰り下げ受給すると、「加給年金」が受け取れない。

この3点は筆者が日頃、男性向けにアドバイスしている注意点だ。繰り下げ受給はいいことばかりではないので、ちゃんと注意点を考慮して、「自分の場合はどうなのか」を考えることが肝心とお伝えしている。

しかし、「働く女性」が自分の年金の繰り下げ受給を検討するなら、(2)と(3)の注意点は考慮する必要がないだろう。つまり、年金が少ない女性は、「繰り下げ受給」が向いている人が多いということだ。