「東日本復興ファンド」で資金を呼び込む

20世紀に国際的な成功を収めた日本企業は数多くあるが、その事業領域がいまや韓国や中国に追い抜かれようとしている。日本を代表するエクセレントカンパニーといえども、ビジネスモデルを見直す時期をとっくに迎えている。その事実をしっかり認識し、どうすれば日本が再び勝ち組になれるのか、まともな経済状態を維持できるのかについて、もう一度深く考える必要がある。

まず大切なことは、日本という国のOS(オペレーションシステム)をどう構築していくかだ。そこには2つの面があって、「政府・官僚の設計」と「民間事業の再設計」がどちらも強く望まれている。そもそも日本は、国の基盤となるOSの発想が乏しい。各省庁など細かく縦割りされて、ほとんどがシングルタスクで共通部分がない。ちょうど昔のワープロ専用機みたいに別々のOSで動き、互換性がないのだ。

本来は国全体の共通OSがある上に、各省庁のアプリケーションが載るという形が望ましい。そうでないから国全体の方向づけがなく、官民が協力して国際競争力を高めることができない。

震災復興を契機に、国のあり方を根本から見直すべきなのだ。いま日本が取り組むべきことは、被災地復興という直近の問題と、日本経済の再建という長期課題を同時に解く「連立方程式」だ。

今回の震災が痛ましいのは、被災地が広範囲にわたり、それだけ被災者数が多いことだ。家族や住宅を失い、これまでつづけてきた仕事を失い、「生き甲斐」を奪われた人はかなりの数にのぼる。

復興活動では、その人たちに生き甲斐となる仕事もつくる。その場合も、「都市OS」という発想が重要だ。

日本の将来を考えれば、例えば教育機関に投資して“知識都市”を築く取り組みも考えられる。私は、東北人の粘り強さは基礎科学の分野に向いていると考えているが、私がかつてCEOを務めたソニーは東北に生産拠点を多く持ち、なかには基礎研究を担っている拠点もある。税制面の優遇などで、東北地方にそのような産業を誘致する手立てを是非考えてほしいと思う。