五輪期間中はリモートワークをするべきか、出社をするべきかで社内が対立したら、どうすればいいのか。産業医として年間1000件以上の面談をしている武神健之さんは「一緒に働いている人でも、知らない事情はある。相手のことを決めつけずに、まずはお互いの話を聞くことが大切だ」という――。
国立競技場に掲げられた「TOKYO2020」の垂れ幕(東京都新宿区)=2021年6月22日
写真=時事通信フォト
国立競技場に掲げられた「TOKYO2020」の垂れ幕(東京都新宿区)=2021年6月22日

リモートワークを希望する人の共通点は「快適な労働環境」

東京ではオリンピックを前にして、4回目の緊急事態宣言が発出されました。私の産業医面談ではその少し前の7月になった頃から、通勤時に外国人をみる割合が増えてきたと多くの社員たちから聞くようになりました。入国者が増えることによる感染拡大に不安を感じる社員も少なくありません。

そのような中、リモートワークを望む声や出社勤務を望む声など、日々、産業医の耳には十人十色の声が聞こえてきています。従業員を出社させるべきかリモートワークをさせるべきか、企業にとっては頭を悩ます状況になってきている印象です。

どこの会社にも、リモートワークを希望する人たちと、出社勤務を希望する人たちがいます。皆、会社の決定に不満やストレスを感じながらも従っていますので、目立った対立はありませんが、お互いに自分たちの正当性を主張し続けています。

私の知る限りでは、リモートワークを希望する人は、年齢や家族構成よりも、家に快適な労働環境(場所、椅子、机、ネット環境等)がある人です。

一方、出社勤務を希望する人は、3パターンあります。ひとり暮らしの若者のワンルーム住まいで、机や椅子などの労働環境に恵まれない人たち。30〜40代の子育て世代で、家に集中して仕事をできるスペースがない人たち。そして、50歳以上の管理職です。管理職の場合は、リモートだとメールやチャットで明確な指示出しができないことを理由に挙げる人が多い傾向があります。