<デルタ株は医療システムが脆弱な国で猛威をふるい、過去最多の感染者が出るなか、影響は日系企業と日本人にも──:大塚智彦>
ジャカルタ
写真=iStock.com/Fredy Tewu
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東南アジア諸国連合(ASEAN)の大国、インドネシアでコロナの感染が急拡大し、非常事態の様相を見せはじめている。7月7日までの累計で感染者237万9397人、死者6万2908人と、ASEAN加盟国中で最悪の数字となっている。

特に6月以降、新規の感染者数が急増しており、7日には1日の感染者数としては過去最高となる3万4379人を記録する事態となっている。

こうしたコロナ感染の拡大はインドネシア人のみならず、インドネシア在留の日本人にも深刻な影響を与えており、首都ジャカルタの日本大使館ではこれまでに把握している在留日本人の感染者数は290人、死者11人としている。しかし「自宅で死亡するケースなどがあり全容を把握するのは難しさがある」としている。

日本人向けアパートで感染者100人か

こうしたなか、ジャカルタ郊外で工業団地のあるチカラン地区では日本人を対象にしたコンドミニアムで43人の日本人住民がコロナ陽性反応となり、軽度、中度の感染日本人は自宅隔離中という。問題は重度の感染者で付近の病院はすでにコロナ感染患者で満床状態になっており、入院できない状況が続いているという。

このため緊急搬送での入院の道を探るために現地日本人コミュニティーなどが動き始めているという。

ただ、このコンドミニアムでの感染者数はすでに100人に達しているとの情報も現地在住の日本人からは寄せられており、かなり深刻な状況に追い込まれ、周辺のコンドミニアムでも日本人の感染者が増えているという。

6日に死亡した在留日本人は40歳代の大手企業の駐在員、7日に死亡が確認されたのは大手商社の50歳代の駐在員でジャカルタ郊外ブカシの病院に入院して治療を受けていたという。

このほかに6月29日にはジャワ島西ジャワ州チレボンでインドネシア伝統の「バティック(ろうけつ染め)」の工房を営んでいたバティック・デザイナーとして知られた日本人女性もコロナ感染での死亡が伝えらえた。

日本大使館ではこれまで11人の在留日本人の感染死亡を把握しているが、インドネシア人と結婚し、イスラム教徒に改宗した日本人が自宅で感染死亡し、イスラム教にのっとり24時間以内に埋葬された日本人も約10人いるとの情報もある。こうした日本人の状況については日本大使館も把握していないという。

工場やオフィスでクラスターも

こうした在留日本人の間でもコロナ感染が厳しい状況になるなか、日本の大手電子機器メーカの工場で約100人規模の感染クラスターが発生したり、日本食レストランの従業員寮で約10人が集団感染したりするなどの事態も発生している。