一方、民放キー局トップの日本テレビは、広告収入の落ち込みは8%減と1社だけ1桁に抑えたものの売上高は7%減、営業利益も12%減。連結は、スポーツクラブ事業が振るわず、売上高8%減、純利益21%減だった。

コロナ禍を言い訳にできないテレビ離れの深刻さ

広告費は景気の動向に左右されるため、これまでも放送局の広告収入が減ることはままあった。2008年のリーマンショックでも大きく落ち込んだが、景気の回復とともに上昇に転じ、一過性に終わっていた。

だが、コロナ禍による今回の危機的状況は、これまでのように景気が持ち直せば広告収入が回復するという図式が当てはまらなくなりそうだ。

国民生活時間調査2020」で示されたように、「テレビ離れ」が急加速しているというライフスタイルの激変、つまり景気の動向とは異なる社会構造的な要因が新たに生まれているからだ。

若者世代を中心とするメディアライフは、ソーシャルメディアであるSNSの普及とともに、4G・5Gという高速の無線通信ネットワークの進展やスマートフォンというツールの高度化で、急速に様変わりしている。

テレビという時間を拘束されるメディアから、自由度の高いネットメディアに興味と関心が移行するのは必然だろう。

テレビからネットにシフトする「広告費」

テレビ広告費の指標は、言うまでもなく視聴率である。視聴率が高ければ広告収入が伸び、低ければ低迷する。だから、放送局は視聴率競争に血道を上げてきた。

だが、肝心の視聴者がテレビを見なくなるのであれば、テレビ全体の視聴率が上がることは望めない。

民放各局は、2020年度決算で赤字を回避するため番組制作費を大幅にカットしたが、広告収入が戻らなければ、さらに番組制作費を削らざるを得なくなり、その結果、番組の質が落ちて視聴率が下落し、広告収入はさらに落ち込む、という悪循環に陥りかねない。

巨額の広告費を投入する広告主(スポンサー)にしてみれば、視聴者の「テレビ離れ」、特にターゲット層の若者世代の半分がテレビを見なくなったことが数字ではっきり示された以上、これまでのようにテレビ偏重でいいのか、ということになる。

ネット広告は、利用者へのリーチ度や購入履歴などの広告効果が詳細に把握できるという点で、テレビ広告にないメリットがある。したがって、ユーチューブなど、より広告効果が見込めるネットにシフトしようと、あらためて検討することは十分に推察できる。

電通の調査によれば、国内広告費でネットがテレビを上回ったのは2019年。20年は、ネット2兆2290億円(前年度比5.9%増)に対し、テレビ1兆6559億円(同11.0%減)とさらに差が広がっている。

テレビの魅力が失せる中、民放各局の業績回復はますます見通せなくなっている。高給取りと言われる社員の給与削減やリストラも現実味を帯びてくるかもしれない。