「子供のいない人にはわからない」と言われたらどうするか

様々なビジネス研修動画をオンライン上で展開する企業のコンテンツに、ビジネス書作家が著書について語るという人気のオンライン番組があり、光栄なことに私がゲストとして出演させてもらったときのことです。

60分番組の最後には質疑応答のコーナーがあり、ライブで視聴してくださっていた数百名の方々から、たくさんの興味深いご質問をいただきました。

その中のご質問で印象的だった一つを紹介します。

質問者の女性Aさんは、友人Bさんと会話をしていて、「子供のいない人にはわからない」といわれて傷つき、その後もBさんに対してのモヤモヤが消えず、Bさんからいわれたことを忘れるべきか、本人に直接、そのことを伝えるべきか、どうすればよいでしょうといった内容でした。

「子供のいない人にはわからない」ということを子供がいない人に話すのは、無神経の極みであるといえます。

中には相手との関係性に安心しきっており、感情任せに頭に浮かんだことを伝えてしまう場合もあるでしょう。

まず、妊娠や出産というのは、パートナーがいるいないということにかかわらず、年齢や心身の健康状態、生まれ持った疾患など、多くの要素が絡み合う問題ですから、そんなに単純なことではないという前提が必要かもしれません。

そこで、Aさんへの私からの回答としては、「まずは自分の価値観を明確にする」ということでした。

モヤモヤの正体を具体化する

「私はあの発言によって確実に傷ついた」ということを受け止めて、モヤモヤの正体を言葉によって具体化できれば、冷静になれるからです。

例えば「『子供のいない人』といって、私の心を苦しめる人と無理につき合う必要はない」「思っていることをすぐに口にする無神経な人とはウマが合わない」などです。

その上で、その後も相手との関係を続けたい(続ける必要がある)のであれば、改めて、相手はそういった発言をする人でもあると心の折り合いをつけて、つき合い方を考えていけばいいのです。

「今回はたまたま悪気もなく、うっかり口にしてしまっただけかも」と考えてもいいですが、残念ながら人が言葉で発する内容は「うっかり」では済まされず、それが本心だったり、価値観の根幹だったりすることも事実です。

縁は切りたくないけれど、何事もなかったようにはできない場合は、「子供のいない私は、何も役に立てそうにないのかな。ちょっとショックだな」などと、相手に自分の率直な気持ちを伝えてみて、その反応を見てみるのはいかがでしょう。

そのときの相手の反応が、「あなたを傷つけてしまって本当にごめんなさい」「実は、あんな酷いことをいってしまって、ずっと後悔していたの。ごめんなさい」などというもので、相手も一緒に苦しんでいたことがわかれば、もう一度、相手を信じてみようと思えるかもしれません。