食糧問題の観点からも注目されている

2050年までに、地球上の人口は97億人になり、食糧不足が懸念されている。ベジタリアン・ヴィーガンなどが流行した背景にも、人口爆発による食料不足があった。野菜を食べる動物を人間が食べるよりも、野菜食にシフトしたほうが、食料の消費量が減るからだ。

コオロギはその点、餌の消費量が少ない。タンパク質1kgを作るために必要なコオロギの餌は1.7kgだ。鶏肉の2.5kg、牛肉の10kgに比べて圧倒的に少ない。それゆえ、ベジタリアン・ヴィーガン食のグループにも、昆虫食は注目されている。

また、コオロギ食は国連の掲げるSDGs(持続可能な開発目標)にもかなっている。SDGsとは、国連が定めた地球と人が持続可能なかたちで共存するための目標で、17のゴールが定められている。

その中には「貧困をなくそう」「飢餓をゼロに」が含まれている。コオロギに限らず昆虫食はこの2つのゴールを達成しうる手段として、世界中で注目されてきた。

コオロギ食を提供する高級レストランも登場

昆虫食のブームは、世界的に見れば最近のことではない。そもそもは2013年に、オランダ・ワーゲニンゲン大学の研究グループを中心に“Edible insects - Future prospects for food and feed security”(食用昆虫――食用および飼料の安全保障に向けた未来の展望)(*3)という報告書が国連食糧農業機関(FAO)で作成されたことに端を発する。

これが海外で昆虫を食べる火付け役となり、主にサステナビリティの観点から、昆虫が一般のスーパーマーケットなどに出回った。筆者も2016年にイギリスでミールワームのチップスを食べているが、当時はおいしいと言えるものではなかった。

日本でブームになるには、サステナビリティだけでは不可能だ。日本のオンラインページを調べたところ、2017年ごろからぽつぽつと昆虫食に関する記事が登場する(*4)。そして、2020年の5月23日から無印良品がコオロギせんべいを発売。大きな転換期となった。

日本でコオロギ食を販売しているのは、大手食品会社だけではない。日本では、「コオロギのインフルエンサー」ともいえるレストランが存在する。

東京・日本橋のANTCICADAは、ミシュランで三ツ星を獲得したレストランL'Effervescence(レフェルヴェソンス)で修行した白鳥翔大さん、東京農業大学大学院にて、人間の味覚や醸造を研究した山口歩夢さんなどが集まってできた、コオロギ食専門レストランだ。コオロギを高級なレストランで食べる経験を積むことで、「コオロギ=高級食材」として認識する人も出てくるだろう。

このようなコオロギ食専門レストランは、国産の食用コオロギを安定的に供給できる生産拠点の登場によって実現可能になった。その代表格が、徳島に本社を構えるグリラスだ。徳島大学のフードテックベンチャーとしてコオロギの飼育を行っているグリラスは、食用コオロギを安全・清潔な環境で生育し、各店に提供している。

こうした、世界的な動き、大手小売、高級レストラン、流通体制など複数の条件が整ったいまだからこそ、コオロギ食がブームとなる素地ができたと言えるだろう。

(*3)“Edible insects - Future prospects for food and feed security”
(*4)世界の飢餓を救う?注目集める「昆虫食」 家庭用飼育キット発売、ラーメンにもトッピング