先進国中でも最悪の財政状態になっている
新型コロナウイルスの蔓延に伴う経済対策で、いわゆる「国の借金」が急増している。
財務省が四半期ごとに発表している「国債及び借入金並びに政府保証債務現在高」によると、2020年末に1212兆4680億円と初めて1200兆円を突破した。財務省はこれまでも「国の借金が最高を更新している」と警鐘を鳴らしてきたが、新型コロナ発生以降の増加率はこれまでとは水準が違う。
四半期ベースで見ると、2020年3月末までの5年間は、前年同期比0.4%減から3.5%増の間で推移、概ね1%台の増加ペースできた。ところが、新型コロナが広がって以降、2020年6月末は4.8%増、9月末は7.7%増、12月末は9.2%増と急激に増えている。もちろん新型コロナの影響で経済活動が凍りついたため、ひとり一律10万円の特別定額給付金や雇用調整助成金、GoToトラベルといった前例のない大型経済対策を打ったからにほかならない。
経済の悪化でGDP(国内総生産)も落ち込んでいるため、国の財政状況をみるGDP対比の借金額は、ゆうに2倍を超え、先進国中でも最悪の財政状態になっている。それでも新型コロナ対策による財政出動は世界共通の手法のため、日本の財政状況だけが特段注視されることもなく、幸いなことに、円安や債券安(金利上昇)にはつながっていない。
新型コロナ前から、国の借金は増え続けていた
もともと新型コロナ前から、日本政府には「大盤振る舞い」体質が根付いていた。3月に成立した2020年度当初予算の歳出総額は102兆6580億円と、長年予算作成上の精神的ハードルとなっていた100兆円の大台をあっさり上回った。高齢化に伴う社会保障費の増大に歯止めがかけられないことが主因だったが、「国土強靭化」を旗印に、公共事業費や復興関連予算も高水準が続いていた。
政府が緊縮予算に転換しなかった背景には景気の底入れで税収が増加、バブル期を上回って過去最大になっていたこともある。また、安倍晋三内閣下で2回にわたって消費税率を引き上げ、消費税収が倍以上になっていたこともあった。要は収入が増えたことで、緩んだのだ。それでももちろん、歳出を税収で賄うことはできず、国債発行への依存が続いており、ジワジワと「国の借金」が増えていた。