結婚や出産をしない女性は不幸なのか。『「ふつう」の家族にさようなら』(KADOKAWA)を上梓した信州大学特任准教授の山口真由さんは「結婚する理由も、しない理由も、本来はさまざまだ。重要なのは、結婚と未婚の違いを際立たせることではなく、同じ部分を探し出すことだろう」という――。

「選択できる立場」でいたい

——山口さんは、周囲から「結婚しないの?」と訊かれたとき、どう答えているのですか。

山口真由氏
山口真由氏(写真提供=テイクシンクinc)

【山口】そういうときはとりあえず「結婚したいけど、できないんです」と言っています。

なぜそう答えるのかといえば、めんどうなのと、私は鼻につく感じに見られやすいのに、回りくどく説明していたら、よけい鼻についてしまうだろうと思うからです。

「したいけどできない」と言っていれば、「かわいいところがあるじゃないか」となりますから。まあ、「そっちのほうが楽だから」という理由で、ステレオタイプな見方に乗っかっているわけなので、いいことではありませんね。

私の場合、自分が「結婚する」「しない」を選ぶ側でいたいんです。女性には出産というタイムリミットがありますが、私は自分の卵子を凍結保存することで先送りしています。

——「選ぶ側でいたい」という言い方をすると、「それはめぐまれた一部の女性だけの特権」と、反発する人もいそうですね。

【山口】おっしゃる通りと思います。小倉千加子さんは『結婚の条件』(朝日新聞出版)で、女性にとっての結婚の目的を「生存・依存・保存」の3つに分類しています。でも私は何かの目的のために結婚する必要はなくて、自分が結婚するしないを選べる立場にあることに、心地よさを感じているのは事実です。

いまは妹と二人暮らしなので、気楽に生きていられます。たとえば今日はこのあと仕事の予定がないので、家に戻ってお風呂に入って、本を読んで、たぶん早めに飲み始めると思います。もし子どもがいたら、そういうことはできないでしょう。

そういう生活を自分の意思で選択してきたので、その結果どうなったとしても、文句は言うまいと思っています。