提案5:おじさんよ、我に返れ
今の世の中には、キャリアの棚卸しをうたう研修や本などが山ほどあります。しかし、「仕事」のことだけにフォーカスしても本当の「棚卸し」はできません。ある程度年齢を重ねた人は、プライベートも含めて「自分」を見つめ直すことが必要です。
かつて私は、サイゼリヤ人事とNLPインスティテュートのCEOである堀口紫さんが共同で設計した「コミュニケーション研修」を取材したことがありました。これは、サイゼリヤが大きくなる時期を担ってきた主戦力でもある40代の管理職を対象とした2泊3日の研修なのですが、私が印象的だったのは、研修後のシートに、多くの人が仕事ではなく家族のことを書いていたことでした。また「感情」を表現していたことも印象的でした。
「研修から帰宅後、妻に感謝の言葉を伝えたら、驚いていたが、ありがとうと言われた」
「急だったが両親に会おうと連絡した。今会わないと後悔することになりそうだから」
「ストッパーが取れて、自分の中から溢れ出すものがあった」
この3日間で彼らに何が起きたのでしょうか? 変革推進本部PMOの内村さやかさんにこの研修の狙いを聞いたところ、こんな答えが返ってきました。
このままでは、若い世代の離職の元凶になってしまう
「会社のステージが変わり、戦略を変えても、中間管理職層が動かないと戦略が機能しない。フラットな組織にしても、上意下達で動くことに慣れている。だから変わってもらわないといけない。そんな目的意識で始めた研修です」
「この研修の対象は、ボリューム採用層で入社20年ぐらいの人たちです。イケイケどんどんの急成長期を担った社員で、残業も多く店で寝泊りすることもあった世代です。ガッツと体力でその時代を潜り抜けてきた人たちが管理職になり、昭和的な体育会系のコミュニケーションから抜け出しにくい。職人気質で黙々と仕事をする。このままだと若い世代の離職の元凶になってしまうという危機感がありました」
また、研修を受けた社員の側に、この研修で気づいたことを話していただくと、次のようなコメントがあったそうです。