米国の戦略的なデジタル推進体制
例えば、米国ではトランプ政権にCTO(最高技術責任者)がいて、トランプ大統領に直接国家のIT戦略について策定、助言、実行を担ってきました。
米国CTOの役割は、米国での新興技術の開発を奨励し、米国企業が新しい技術を商業化して採用できるよう促し、米国民が21世紀の経済で成功するために必要なツールへのアクセスを改善および拡大することとあります。
また、アメリカ人労働者のために新技術の開発を促すこと、国外でのアメリカ発イノベーションを擁護すること、そしてアメリカ人の安全とセキュリティーを保護することなどの責任があります。
現在の米国CTOはマイケル・クラトシオス氏です。1986年生まれで、ピーター・ティール氏率いるベンチャーキャピタルであるシールキャピタルの元経営陣です。彼はトランプ大統領の支援者でもあり、投資家として幅広い技術を見てきた経験を生かして、以下の領域で政策に取り組んでいます。これらはバイデン政権に移行後は修正や更新される可能性がありますが、少なくとも政府のデジタル戦略の取り組みとしては参考になるのではないかと思います。
●クアンタムコンピューティング
●5G
●ブロードバンドコミュニケーション
●自動運転
●商用ドローン
●STEM教育
●応用製造
それぞれの領域で、国防省や司法省などの政府各省が取り組むべきアジェンダを作りこみ、その進行具合をチェックするためのKPI(政策成果目標)の策定などを行っています。
国民のメリット、目的や戦略も具体的に示す米国
特にトランプ大統領が署名した「AIイニシアチブ」という大統領令に関して、アメリカの各省がどんなAI導入やAI活用をすべきか、その導入の進捗を評価するための基準設定に関してまとめられた1年目の報告書には、非常に具体的にアジェンダが記載されています。
AIイニシアチブは6つの分野でゴールを掲げています。
●AIリソース(連邦政府が管理するデータやモデル)を開放する
●AIイノベーションへの障壁を取り除く
●AIが導入されたあとの働き方やリカレント(就労のための学び直し)教育を充実させる
●国際社会での米国のAIリーダーとしての地位を確立する
●米政府自体が信頼のおけるAIを進んで活用する
各連邦政府機関が独自のAI開発とAI活用のための戦略とプランを立てており、例えば、国防総省は軍事機能を高めて国防を強化するためのAI活用を推進し、運輸省は米国内の道路におけるAI活用方法や自動運転に関する法整備に当たるとあります。