通訳泣かせのトランプ大統領
さて、一方のトランプ大統領だが、彼の話し方は大統領に就任した当初から通訳泣かせだといわれている。4年前、ジャパンタイムズの後輩記者がトランプ氏のスピーチについて日本人の通訳者たちに取材したところ、単調に同じ言葉を繰り返し使うのがトランプ流だと言われたそうだ。確かにGreat(すばらしい)、tremendous(すごい)、very(とても)など日本人の私たちにもわかりやすい簡単な単語を彼は好んで使う。
当時行われたカーネギーメロン大学の研究によると、トランプ大統領の言葉遣いは、歴代大統領の中で一番低いレベルであり、中学一年生レベルだという。また文法は、小学5年生と6年生の間ぐらいのレベルで、ジョージ・W・ブッシュ元大統領の5年生レベルをわずかに超えただけだという。
簡単な単語なら通訳しやすいのではないかと思うところだが、小学生レベルの単語でも、話し方が論理的でなく、時には飛躍し、意味をなさないことがよくある。それを日本語に変換しなければならないときの難しさ。さらに差別的な言葉や、性的表現が出てきた時にはどこまでそれらをテレビの中継時に忠実に通訳すべきなのか自問自答をするという。
通訳者はあくまでその人になりきって正確に訳すことが求められ、勝手に美しい言葉や無難な言葉に置き換えることはできないし、同時通訳ともなればそれらを瞬時に訳さなければならない。こんな悩ましい話を記事にしたところ、イギリスのインデペンデント紙やアメリカのメディアなどが後追いし、日本発のこのニュースが世界から注目されたのを今でも覚えている。