たとえば、40年生まれの人が平均余命まで生きると、「生涯に受け取る受給額」から「生涯に支払った保険料」の差額は3100万円となり、その分、生涯収支は得となる。一方、60年生まれの人の収支は、マイナス200万円。下の世代にいくほど格差は広がり、70年生まれの人の場合は、その額マイナス970万円に。つまり現在40歳の人は、約1000万円もの払い損となるのだ。
これでは、祖父が子から孫の世代へ莫大な負債を受け継がせるようなもの。このように、08年までの経済状況と新人口予測を反映させて試算すると、「100年安心」どころか、60年には積立金は完全に枯渇してしまう。
仮に政府の少子化対策が、劇的な効果をあげたとしても、今後生まれる子供が就労するのは約20年も先のこと。年金財政にもたらす貢献度は非常に限定的だ。
結局、賦課方式こそ諸悪の根源となる。世代間の不公平をなくすには、相互依存関係がない積み立て方式に戻すしかない。その場合、現在の高齢者世代と自分たちの老後の年金を二重に支払う、現役世代の負担は一時的に重くなる。が、国にいったん高齢者分の負債を背負ってもらい、その後、何世代にもわたって広く薄く負担する形をとれば、現役世代だけに負担を押しつけずとも移行は可能となる。
だが残念ながら、それでも70年生まれ以降の年金収支は払い損になる。しかし、その後はすべての世代で、損失は300万円以内に収まることになる。
(村上 敬=構成)