役所のデジタル化を進める

今回、総裁選の中で一際耳目を集めた「デジタル庁創設」も現在の旧態依然とした役所の仕組みを根こそぎ叩きなおす改革となる。単純に役所のデジタル化を進めることを是とするだけなら誰でも言えるが、そのためには無数の政治的・行政的な障害が存在していることは言うまでもない。

真の課題は今までの政治家は誰もこの複雑な連立方程式を解くための「仕組み」を考えることができなかったことにある。デジタル化を阻害する既得権層は与野党および行政機構内に広がり、単純に与党政治家のデジタル面での後進性だけでは説明できない根深い問題である。その結果として、デジタル化についても既得権層の抵抗で進めることができず、PCも触ったことがないIT担当相がいる骨抜き状態の有り様となっている。

この問題を解決するためには、省庁間の連携、中央・地方の問題、公務員労組の問題、民間事業者側の問題などを熟知し、官房長官、総務相、地方議員としての政治・行政の現場の薫りがする重層的な知見が必要だ。そして、デジタル化を実現するためには実行力が必要であり、剛腕を振るうことも時として重要になる。

菅新政権が仕組みを整えて政策を断行していくうえでの最大の障害は何か。前述のダム管理、携帯電話料金、そして政府のデジタル化は一般の国民生活を改善するだろうが、その政策の恩恵はいかにも地味である。まして、政策を実行するための優れた仕組みを構築することの大切さを知る人などほとんどいない。

菅新政権による改革によって痛みを受けるのは「既得権に群がる一部の特権層」だ。自分たちの縄張りを守りたい役人達もこれに含まれる。現在、菅新政権が立ち上がる前から、菅氏による霞が関の官僚に対する政治主導の在り方が元官僚・大手メディアらから槍玉に挙げられている。今後も常に既得権層の代弁者である大手メディアから「冷たい」「傲慢だ」「やりたい放題」などの批判が寄せられることになるだろう。

菅新政権がもたらす規制改革は日本の政治・行政に関する不合理を解決し、日本経済復活に向けた道筋を整備するものになっていく。その意義と成果を非既得権層の国民にわかりやすく伝えることは新政権の大きな課題となる。

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