ポーラにもある「思いやりバイアス」とは

【白河】一般的に、女性の存在が当たり前になる分岐点は3割と言われていますが、2割でもそうなるんですね。ただ、他の企業では、トップが号令をかけても女性がなかなか役職まで上がってこないという現状があるようです。ポーラでは、役職候補リストなどに女性が入っていなかったら、入れるように声かけをされるのでしょうか。

【及川】もちろんです。当社でも、男性上司が「あの女性は育児中で大変だろうから」といった、まったく悪気のない“思いやりバイアス”で女性をリストから外してしまうケースがあります。そんな時は、周囲が「このリスト、男性しかいないけどおかしくない?」と声かけをしていますね。やはり、残業できる人や転勤をいとわない人からリストアップしていく慣習がまだまだ根強いのかなと思います。

【白河】ポーラでも、アンコンシャスバイアス(無意識の偏見)にまつわる課題があるのですね。

【及川】私も以前、ある部長に「うちの部署に男性を1人異動させてほしい」と相談されたことがあります。どんなスキルを持った人がいいのか聞いたところ、それにぴったり当てはまる女性がいたんですね。彼女を紹介したらとても感謝されたのですが、「でも確か男性がほしいって言ってましたよね」と言ったら、自分のバイアスにハッと気づいたみたいで(笑)。必要なスキルが備わっていれば性別は関係ないはずなのですが、これは幼い頃から育まれた思考のクセみたいなものですから、やはり時間をかけて修正に取り組んでいかなければいけないなと思いました。

【白河】トップがそうした意識をお持ちなのはすばらしいですね。

【及川】ただ、こうしたことはトップの意志だけではうまくいきません。ダイバーシティを日常化するためには、トップやマネジメントクラスそれぞれで気づきのフェーズが必要になってきます。女性管理職の数も目標数値はクリアしていますが、そこに安住してしまうと、いずれ伸びが鈍化するでしょう。トップも社員も、全員が常にダイバーシティを意識しておくことが大事だと思います。