コロナによってアウトドア用品の市場は活性化。その代表的なブランドの1つ、ザ・ノース・フェイスが、なぜ対極に位置するように見えるマタニティウエアに進出したのか。マーケティングライターの牛窪恵さんが解説します。

市場急成長中でも、新市場に挑戦

コロナ禍による「3密回避」や「家キャン(おうちキャンプ)」ブームなどで、アウトドアが空前のブームとなりました。

妊娠中はもちろん、産後も長く使えるコート。写真提供=ゴールドウィン
妊娠中はもちろん、産後も長く使えるコート。写真提供=ゴールドウイン

例えば、スノーピークの2020年8月の月次売上は、前年比45%増と大幅に伸長(連結合計)。矢野経済研究所も、20年のアウトドア用品全体の市場規模を、前年比4%増(2748億円)と予測しています。長年、一大市場とされてきた「ゴルフ用品」を、初めて逆転するかもしれないと見られているのです(2020年7月2日 日本経済新聞)。

言い換えれば、いまアウトドアは、黙っていても売り上げの上昇が見込める“オイシイ”市場。でもそんななかあえて、新たな分野への「挑戦」を続けるブランドがあります。

「THE NORTH FACE(以下、ザ・ノース・フェイス)」(ゴールドウイン)。

19年10月、同ブランドのファンを驚かせたのは、「マタニティウエア」の販売開始でした。新展開となったシリーズ商品は好調で、コロナ禍でも販売店舗が拡大。現在、当初の2倍以上に増えています(20年9月末現在)。

一体なぜ、アウトドア製品で知られるブランドが、「マタニティ」に挑戦したのでしょうか。