使用後の患者の頭髪の変化について、プロペシアの治験にも参加したNTT東日本関東病院の五十嵐敦之皮膚科部長がその実態を語る。
「うちは電子カルテのため、患者さんは撮影した頭部の写真を自分で確かめられます。『これが最初に診察したときの写真で、次のが今日撮った6カ月後のものだよ』と画面を見せると、ほとんどの人がその差の大きいことに驚きますね。私の印象では、8割の人にはっきりとした効果が表れる。『ちょっと改善したかな』が2割、『全く効果なし』の人はあまりいません。ただし6カ月は飲み続けないと、見た目の効果はなかなかわかりません」
よくAGAは、「現状維持のままで変わらないのが効果のある証拠」と言われるが、この言葉は禿げの身にとって不満足だが受け入れるしかないのが現実だった。五十嵐部長が話を続ける。
「AGAは放っておけば、だんだん毛が減っていくことは確かで、脱毛の進行が止まることは効果の一つです。ただ、患者さんはやっぱり髪の毛が増えることを望んでいます。ですから目に見える効果があるとすごくうれしいし、治療意欲もわく。だから治療の効果を患者さんに実感してもらうことが大事で、そのためにも写真は欠かせません。周りから『あれ、ちょっと多くなったんじゃない?』とはっきり言われる薬だから、その意味ではライフチェンジング、患者さんのQOL(クオリティー・オブ・ライフ)を改善する薬と言っても過言ではありません」
確かにAGAで悩む男性にとって改善率が8割近く、維持率となるとほぼ完全に近いだけに治療に強い期待をもてる薬である。だが、こと男性ホルモンに関係するだけに、飲む前に副作用を心配するのは当然だが、その点はどうなのか。坪井教授(前出)が解説する。
「男性ホルモンの活性化を抑えるということから、性機能が低下するのではとの心配もあるようです。が、フィナステリドはDHTを抑えるだけで、性機能に直接関係するテストステロンの量を変えたり、影響を与えるわけではないので心配ありません」
ただ念のため書き添えておけば、副作用で注意しなければならないのは、妊娠している女性が服用した場合、胎児が男の子だと外性器形成に異常が起きること。このため妊娠の可能性のある女性は使用できない。