なぜネットでは批判や誹謗中傷をよく目にするのか。国際大学GLOCOMの山口真一准教授は「ネットの言論空間では、極端な意見を持つ人が発信しやすい。私の調査では、『現実には14%しかいない「非常に賛成」「絶対に反対」という極端な人』が『ネット上の46%の意見になることがわかっている』」という――。

※本稿は、山口真一『正義を振りかざす「極端な人」の正体』(光文社新書)の一部を再編集したものです。

夜中にコンピューターのモニターの前に座っている人
写真=iStock.com/tommaso79
※写真はイメージです

75%の人は「ネットには攻撃的な人が多い」と考えている

私が以前約2000人を対象にアンケートをとったところ、75%の人は「ネットには攻撃的な人が多い」と考えており、70%の人は「ネットは怖いところだ」と考えていることが分かった。

「極端な人」によるネット上の誹謗中傷を見てネットに怖いイメージを持つ人は、世の中に大勢いるといえる。

ネット右翼という言葉もある。ネット右翼とは、インターネットと右翼をかけ合わせた言葉で、ネット上の掲示板やブログ、SNSなどで保守的・国粋主義的な意見を発信する人のことを指す。

画一的な定義は存在しないのが現状だが、大阪大学准教授の辻大介氏は、日本版のオルタナ右翼(※)がネット右翼だとしたうえで、「中国と韓国への排外的態度が強い」「保守的・愛国的政治志向が強い」「政治や社会問題に関するネット上での意見発信・議論への参加を積極的に行う」という特徴全てを満たしている人と定義している。

※:アメリカにおける既存の右翼・保守思想に対する別の選択肢という意味で「オルト(alt)」という言葉が「右(right)」についた言葉。反フェミニズム、反多文化主義(排外主義)、反ポリティカル・コレクトネス、そしてレイシズムやミソジニーが特徴だと、駿河台大学准教授の八田真行氏は指摘する

定義からも明らかであるが、排外主義的態度、保守的志向が強く、政治の話題によく首を突っ込むことから、自分の考えに合わない意見に対して行き過ぎた批判や誹謗中傷をしている例も多い。ネット上で政治的な話題を発信しにくくしている一端を担っているといえるだろう。