1つは、「キャッシュの燃焼額」の違いです。営業キャッシュフロー(CF)と財務CFのうち、有利子負債返済額を合計することで、どれくらいキャッシュが消えていくかを示す「*キャッシュバーン」(キャッシュ燃焼額)は、JALの決算説明会資料では456億円/月であり、同じ基準で算定するとANAは548億円/月、と差がでており、JALはANAより年間約1100億円もキャッシュ燃焼を抑えることになります。

稲盛氏は、JAL再建の際に「利益なくして安全なし」といった言葉を残しています。JALは、国内線需要が8割まで回復すると、全社的に黒字化するとの見通しを持っており、8割経済の中で、いかに、利益をだしていくのかを見守りたいです。

恐るべし!“稲盛流”の粘り強さJALvsANA「経営底力」3番勝負

「底は過ぎた」と、京セラ社長

次に京セラを見ていきます。20年7月30日に発表した20年4~6月期の決算は、売上高前年同期比18%減の3170億円、純利益同30%減の223億円でした。新型コロナウイルスの感染拡大で自動車用の部品販売が落ちこみ、在宅勤務の普及で複合機事業も苦戦しています。また、21年3月期は純利益が前期比18%減の880億円である従来予想を据え置いています。谷本秀夫社長は記者会見で、「自動車関連の需要は20年6月までに底を打ち、5Gの需要増も見込める。コスト削減も進めて業績予想を達成したい」と話しています。

京セラは大きく6つのセグメント(事業領域)を持つ会社ですが、その中で最も売り上げが高かったのは、コロナ以前では「ドキュメントソリューション」事業でした。同セグメントは企業や官公庁向けにプリンターや複合機をグローバルに提供している部署です。しかし、コロナによるリモートワークの推進により複合機の需要は低下し、20年4~6月期では3位にまで割合を落としています。セグメント別の売上高でも前年同期比31%減と最も減少幅が大きくなっています。

しかし、京セラの注目すべき点は、コロナ以前からドキュメントソリューション事業以外のセグメントのどこかに売上高が偏ることなく、すべてバランス良く構成されていることです。

どこかがコケても、別の事業でカバーできるようなリスク体制にはなっていますが、今回のコロナでは全体的にダメージを受けています。特に、業績を圧迫している最大の要因は自動車向け部品の苦戦です。都市封鎖の影響などで自動車メーカー工場の稼働が20年4~6月に大きく落ち込みました。京セラでは、セグメント別売上高で1位の「産業・自動車部品」は純利益が65%減となっています。

*両社の20年4~6月期決算を基に馬渕氏が計算。ANAのみ財務CFのうち有利子負債返済額は20年3月期を基に算出した。