※本稿は、武田友紀『「気がつきすぎて疲れる」が驚くほどなくなる「繊細さん」の本』(飛鳥新社)の一部を再編集したものです。
「みんなと仲良くすべき」が人間関係をこじらせる
「誰かのことをキライって思ったことはありますか?」
人間関係のご相談で、こう尋ねることがあります。というのも、相手を嫌えないがゆえに、人間関係に苦労する繊細さんがいるからです。
繊細さんの中には、「キライ」を封じている人がいます。「みんなと仲良くするのがいいことだ」という世間の声をそのまま受けとってしまい、「誰かを嫌っちゃいけない」「人を嫌う自分がイヤ」と思ってしまうのです。
誰のことも嫌わずに生きていけたら幸せ! と思うかもしれません。本当にそうなのでしょうか?
実は「キライ」は生きていく上で大切なセンサー。「キライ」というのは、「この人は、自分に不利益をもたらす気がする。嫌な予感がする」ということでもあるのです。
「キライ」を封じると、「なんとなくキライだから関わらない」が許されず、自分で相手との距離感を調整することができません。相性のよくない相手との距離が、かえって近くなってしまうのです。
自分の中でキライを禁じていると、「嫌ってはいけない」を通り越して「相手を好きにならなければいけない」になってしまい、無意識のうちに自分から合わない相手に近づいてしまうことがあります。
総務の仕事をしている30代のTさんは、苦手な相手ほど「わかってもらわなければ」「いい関係を築かなければ」との思いが強く、自分から話しかけては相手の反応に傷ついていたといいます。
人間関係を理由に転職を考えていたそうですが、「苦手な人と距離をとってもいい。無理にわかってもらわなくてもいいんだ」と気づいてからは、自分からストレス源に近づくことが減り、ラクになって「今の職場でもっとがんばりたい」と思うようになったそうです。
Tさんは職場の例ですが、苦手な人にメールでニコニコした顔文字を送っていたり、SNSで自分から相手をフォローしたり友達申請をしたりと、苦手だと気づかれまいとして、かえって歓迎ムードを出しているケースがあります。相手は当然、歓迎されていると思ってしまいます。
キライを禁じることで、かえって苦手な相手との距離が近づいてしまうのです。あたたかい人間関係を作るには、苦手な相手をきちんと嫌って遠ざけることが必要です。
好きな人との関係を密にし、嫌いな人を遠ざける。「キライ」という一見ネガティブな感情であっても、自分の本音をそのまま肯定することで、自分に合った自然体でいられる人間関係ができていくのです。