人間関係は三者間の関係性で決まる

この問題をうまく説明してくれるのが、心理学者ハイダーの認知的バランス理論です。

ハイダーの認知的バランス理論

図表1の三角形で、P‒O‒Xの三者間の符号を掛け合わせて「+」になれば、その三者関係は均衡状態にあり、そのまま安定するとみなされます。しかし、それが「-」だと、その三者関係は不均衡状態にあるとみなされ、不快感など心理的緊張が生じるため、何とかして均衡状態、つまり積が「+」になるようにどこかの符号を変化させようという動きが生じます。

Pは本人、Oは相手を意味します。Xには、人物、モノ、価値観、趣味、ひいきのチーム、郷里、出身校など、さまざまなものを想定することができます。

符号の「+」は「好き」とか「懐かしい」「思い入れがある」「傾倒している」など、肯定的な関係・感情を意味します。「-」は「嫌い」とか「思い出したくない」「気に入らない」「関心がない」など、否定的な関係・感情を意味します。

巨人ファンと阪神ファンの対立もこの理論で説明できる

たとえば、Pが巨人ファンで、Oも巨人ファンだとします。それは、図表の①でXに巨人を置いたケースに相当し、PとX、OとXの関係は「+」なので、3つの符号の積が「+」になるためには、PとOの関係が「+」になる必要があります。そこで、PとOは良好な間柄になりやすい、ということになります。

ところが、Pが巨人ファンで、Oは阪神ファンなので巨人が嫌いだとします。それは、図表の④でXに巨人を置いたケースに相当し、PとXの関係は「+」、OとXの関係は「-」なので、3つの積が「+」になるためには、PとOの関係は「-」になる必要があります。「-」を偶数個掛け合わせれば「+」になるからです。そこで、PとOは仲が悪くなりやすい、あるいは疎遠になりやすい、ということになります。

ゴルフが趣味の人同士が親しくなる心理も、出身地や出身校が共通の人同士が親しくなる心理も、同様にこの図表の①で説明することができます。ただし、出身地や出身校に対して否定的な感情を抱いている場合は、その出身地や出身校の人物を避けようとする心理が働くので、図表の①でなく⑤のような構図となり、これでは不快感が生じたりするため、OがPを避けるようになったり表面的な関係にとどめようとするようになったりして、④の構図に落ち着くことになります。