デザインはいろいろ。
合成ダイヤモンドは40数万円で製造可能

核家族化やライフスタイルの多様化に伴って、お墓や供養に対する価値観も多様化している。

たとえば「自宅には仏壇がないけれど、亡くなった人を偲ぶものを置いておきたい」とか、「お墓や仏壇はあるものの、兄弟や子供が、それぞれの自宅で故人を偲べるようにしたい」と考える人もいるし、「お墓が遠くにあるので、お墓参りをすることがなかなか難しい」「散骨をしたいのでお墓は必要ない」といった実情を抱え、故人を偲べるものを身近に置いておきたいと考える人も少なくない。

そうした思いを反映した商品が、遺骨や遺灰を自宅に安置したり、肌身につけたりできる「手元供養」品だ。手元供養品といってもその形態はまちまちで、大きく「分骨納骨型」と「遺骨加工型」に分類できる。

「分骨納骨型」の手元供養品には、遺骨や遺灰の一部を入れることができる置物やロケットペンダント、ミニ骨壷、「遺骨加工型」には遺骨を加工して、プレートにしたり、ペンダントトップや合成ダイヤモンドに加工したりするタイプのものがある。人骨だけでなく、ペットの遺骨で手元供養することも可能だ。

実は刑法190条に、「死体、遺骨、遺髪又は棺内に蔵置し足る物を損壊、遺棄又は領得したる者は3年以下の懲役に処す」と定められている。しかし遺族などが手元供養のために遺骨を粉砕する場合は、この刑法に抵触しないとされている。

気になる費用は、「分骨納骨型」だと2万~3万円から十数万円程度、「遺骨加工型」だと、遺骨の粉砕代も入れて十数万円から二十数万円がおおよその目安だが、合成ダイヤモンドをつくるとなるともう少し値がはる。

その加工過程だが、遺骨や遺灰を高温で加熱し、炭素を取り出したあと、特殊な機械で加圧すると、ダイヤモンドになる。マグカップ一杯ぐらいの遺骨があればつくることができ、すでに納骨した遺骨や亡くなって何年も経過した遺骨でも大丈夫だ。

こうした技術を持つ会社はアメリカやヨーロッパにあるが、これらの会社の代理店が日本にもある。ほとんどが女性からの依頼だという。夫の遺骨でつくる人もいるが、子供を亡くした人も多いそうだ。両親の遺骨で指輪を数個つくり、姉妹などで持つ人もいる。

費用は、0.2カラット級で約40万円。指輪やネックレスへの加工賃は別途かかる。決して安い買い物ではないが、いつでも身近に故人を感じていられると、関心を持つ人は少なくない。

もちろん、こうした手元供養品を購入しなくても、骨壷のまま自宅に遺骨を安置しておいても構わない。欧米では、壷型や花瓶型など、自宅に安置しても違和感のないデザインの骨壷が多いが、日本でもこうした骨壷を扱う業者もある。陶芸が趣味であれば、骨壷を自分でつくってもいいし、愛用の水指や壷を転用する人もいる。

昨今、遺骨の行方はお墓という選択肢だけではなくなった。大切な人を亡くしたとき、故人を身近に感じていたいとか、故人に手を合わせたり、語りかけたりしたいといった思いは誰しもが抱く。そんな心のよりどころが手元供養なのかもしれない。