会社の急拡大も、社員一斉退社事件勃発

そうして会社は順調に拡大し、社員も増えていった。フランス ラックスの売り上げが上がっていき、会社規模が急に大きくなったころ、大企業出身者など、入社する人たちの質も変わってきた。

そうなると、今までのような友達感覚であうんの呼吸で仕事をしていくことは難しくなってきた。また、福利厚生の重要性も問われるようになった。

そんな時期に、社員が一斉に5人辞めてしまうという事件が起こる。確かに、人事評価制度や就業規則など、充実したものを構築できていなかった部分はある。一人のアルバイトの女性から、「経営のコンサルを入れたほうがいいですよ」とまで言われてしまった。このときが一番ショックを受けた、と山本さんは苦笑する。

その頃に導入した制度がフルフレックスであった。見よう見まねで行ってきた「経営」がようやく分かり始め、組織が少しずつ様になっていくようだった。「やりながら良くしていく。子育てと同じですね」と山本さんはほほ笑む。

社長にもタメ口で意見するカルチャー

今では女性ばかり30人の会社となった。女性ばかりとなるとライフイベントの重複は避けられず、会社の中で誰かが妊娠・出産しているような状況だ。一方、「遠距離経営」も継続中で、現在は山本さんが日本、高橋さんが米国ロサンゼルスにいる。

それでも、「ベア シグネチャー ショーツ」のような画期的な製品が商品化できたのは、今は二人だけでなく、ビジョンに共感した社員という強力な味方と支え合っているからだ。組織は非常にフラットで、山本さんに対しても高橋さんに対しても、思ったことはタメ口で遠慮なく意見する文化がある。クラウドファンディングをするときも、ページ一つとっても社員全員の意見を盛り込んで進めていったことが成功につながっていると二人は口をそろえる。

「時代を変える商品、今までなかった商品だけど、これがあってよかったねと思えるものを作っていきたい。私たちはイノベーションを起こしながら、社会に貢献していきたい」(山本さん)。

「友達同士の起業」を成功させるというイノベーションを起こした二人なら、女性の未来を変えるイノベーションをこれからも起こし続けてくれるに違いない。

構成=藍羽笑生

山本 未奈子(やまもと・みなこ)
MNC New York/Bé-A Japan 代表取締役 CEO

ニューヨーク州認定ビューティーセラピスト/英国ITEC認定国際ビューティースペシャリスト。1975年生まれ。12歳から大学卒業までをイギリスで過ごす。UCL(ロンドン大学)を卒業後、帰国し、商社と外資系証券会社に勤務。32歳の時ニューヨークの美容学校L’atelier Esthetiqueへ入学し、首席で卒業。同校で教鞭を執るまでに。その後拠点を日本に移し、2009年にMNC New York Inc.を設立。「日本で一番女性を幸せにする会社」をビジョンに掲げ、ビューティーブランド「SIMPLISSE/シンプリス」、ファッションブランド「CALLi/キャリー」、ヘアアクセサリー事業、スパ事業の運営など多数の事業を展開する。また美容の専門家としても美容記事の監修やセミナー、イベントでの講演など多方面で活躍中。著書多数。現在は社長業、美容家業の他、3児(長女16歳・長男8歳・次女6歳)の母としても奮闘中。

高橋 くみ(たかはし・くみ)
MNC New York 取締役 COO Bé-A Japan 代表取締役 COO

UCL(ロンドン大学)卒業後、外資系映画会社、外資系アパレル会社を経て、2009年に山本未奈子と共にMNC New York株式会社を設立。家族と住むアメリカ・ロサンゼルスを行き来しながら、1年のおよそ半分を日本で過ごす。共同経営者の山本同様、シングルマザーに育てられたこともあり「ジェンダー平等」と「女性のエンパワーメント」には人一倍の関心と持論を持つ。フェムテック商品「超吸収型生理ショーツ Bé-A/ベア」のコンセプター。