iPhoneは世界を変えた。それだけのイノベーションを生み出したスティーブ・ジョブズはもういない。だが次にそんな人物が生まれてくるとすれば、いったいどこか。『After GAFA』(KADOKAWA)と『アルゴリズムフェアネス』(KADOKAWA)の出版を記念し、インフォバーン共同創業者の小林弘人氏とIT批評家の尾原和啓氏が対談した――。(第2回/全4回)

※当対談は2020年3月4日に実施しました。

インフォバーン共同創業者・代表取締役CVOの小林弘人氏(左)とIT批評家、実業家の尾原和啓氏
撮影=小野田陽一
インフォバーン共同創業者・代表取締役CVOの小林弘人氏(左)とIT批評家、実業家の尾原和啓氏

世界中が注目「独ホルツマルクトの新しい経済圏」

【小林弘人(インフォバーン共同創業者)】ベルリン市のフリードリヒスハイン=クロイツベルク区に、ホルツマルクトという場所があります。地域住民たちが自身で廃材などを使って都市開発を行い、行政と話し合いながら運営してきた、世界でもあまり例のない独特なコミュニティです。

【尾原和啓(IT批評家)】いわば自治区という感じですよね。自分たちでお金を出し合い、自分たちで映画館やレストランやバーなどを作って。しかもドネーション・エコノミー(客の側が支払う金額を決める仕組み)で、寄付によって新しい経済圏を確立しようとしている。そのやり方が非常にフラットで斬新なので、世界中から注目されています。

【小林】2016年、僕が現地のレストランに行ったときには、隣の席でベルリン市長とシカゴ市長がランチを食べていました。あるいは自動車産業が衰退したデトロイト市も、ホルツマルクトから人材を派遣してもらったりして協力を仰いでいます。日本の地方都市も、参考になる動きだと思いますけどね。

【尾原】クロイツベルクは、旧西ベルリンの東端に位置しています。かつてベルリンが東西に分断される際、最後まで抵抗した地域でもある。そんな経緯を歴史から消そうとせず、かといって抵抗の地という堅苦しさを残すこともなく、柔軟で自由なカウンターカルチャーの地域として再生させました。そういうところが高く評価されているのかなという気がします。