「人の体の約60%が水分です。“のどの渇き”を感じたときは、すでに体内水分量の1%が喪失され、血液粘度が高まっている状態なので、のどが渇く前に飲みたいですね。適宜水分を取ることで血液粘度を下げ、血栓や血管の詰まりを予防し、心筋梗塞や脳梗塞の発症リスクを低下させます。また、痛風や尿路結石も水を適切に取ることで発症を防げるとされますし、膀胱炎も水分を十分に補給すると、尿道や膀胱に増殖する細菌を洗い流すことができ、予防・治療に役立ちます」

井上氏が飲み物で一番お勧めするのは「水」という。「カフェインを多く含むものは尿の量を増やし体内の水分を排泄してしまいますし、砂糖を多く含むものは吸収までに時間がかかります」とのこと。

飲んだ水はわずか30秒で血液に入り、1分で脳と生殖器に達し、10分で皮膚組織に、20分で肝臓や腎臓に届く。血液の82%は水でできており、その血液が体をめぐりながら全身の細胞に栄養分と酸素を運搬しているのだ。逆にいうと水分不足で血液循環が悪ければ、体のすみずみまで栄養や酸素が行き渡らず、細胞の新陳代謝が悪くなって免疫細胞の機能低下を招きやすくなる。

「水分を取ることで血液の流れをスムーズにしたり、汗となって体温の上昇を防いだり、活性酸素を消去する酵素の働きを活発にして免疫機能を正常化させます」と管理栄養士の望月理恵子氏が補足する。女性が気にしやすい「むくみ」も、水分の取りすぎが原因でなく、代謝が悪くなった状態。普段からこまめに水分を摂取する人ほど、むくみにくい体質になるようだ。

水道水は厳格な基準を満たす

それでは、どのタイミングで水を飲めばいいのか。

井上氏は「1度に飲む量はコップ1杯弱(150ミリリットル)」を勧める。

「たくさん飲むと、体の水分量を一定に保とうとする生理作用により、せっかくの水分があっという間に排出されてしまいます。飲むタイミングと量を工夫すると、効率的に吸収されるでしょう」

「水分摂取タイムテーブル」を示したので参照してほしい。水の温度は、この時期なら常温より少し冷たいくらいの10~15度が適している。口に含んでのどを通り、胃に入るときにちょうど常温になるため、体に負担をかけずに飲むことができるだろう。

水分摂取タイムテーブル

「水道水」と「ミネラルウオーター」は、どちらがいいのだろう。

意外と知らない人が多いのだが実は水道水は、1日2リットル、100年飲み続けても人の健康に影響を生じないとする51項目の水質基準(水道法)をクリアしている。食品衛生法で安全性を確保した「ミネラルウオーター」とは安全性の保証レベルが違うといっていい。したがってコストが低いことと品質の安定性からいえば水道水がいいが、機能的な面を追求するなら市販のミネラルウオーターも利用しやすい。

しかし一口にミネラルウオーターといっても玉石混交。再び井上氏に解説してもらった。