団体代表が住宅5戸をキャッシュで購入した

「反日」が国是ともいわれる韓国国内で、その批判がずっとタブー視されてきた正義連。尹氏は4月15日の韓国総選挙で与党「共に民主党」から出馬、初当選を果たしたばかりだ。得意の絶頂と思われた次の瞬間、皮肉にも「疑惑の総合商社」と化した状態だ。

聯合ニュース(5月21日付)によれば2012年に現代重工業から受領した10億ウォンを原資に保養施設を相場の3倍の7億5000万ウォンで購入し、近年、半額程度で売却。売買した尹氏の知人と尹氏本人らの背任容疑が捜査の対象だという。1995年から2017年にかけて、尹氏のファミリーがマンションなど住宅5戸をすべてキャッシュで購入した際の資金源も、野党議員に追及されている。

告発した李氏は、1993年に自らの体験を書籍にして出版、韓国国内でも著名な存在であり、2017年に訪韓したトランプ米大統領をハグした光景が報じられたことで、日本でも知られている。李氏の告発が本当なら、正義連は慰安婦という存在をダシにして長年金儲けを続けていたということになる。正義連にしてみれば、日韓関係がこじれて長引くほど“儲かる”わけだから、そもそも活動の動機に疑念を抱かれても仕方あるまい。

それどころか、前身の挺対協について、「日韓分断のために組織された」「日韓・韓米関係を破綻させ、大韓民国を『金氏朝鮮』(北朝鮮)と中国の手に委ねようとした」と断じ、そうなるに至る経緯の詳しい報道も出始めている(Japan‐in Deaph5月26日付『韓国激震、支援団体真の目的』)。

「私は慰安婦ではなかった」

李氏の告発を受けて、正義連は税務申告のミスは認めたものの、「横領はいっさいない」と釈明。「李氏は年を取って記憶が変わった」などと主張した。尹氏本人も、フェイスブックに「李氏は1992年に、電話で蚊の鳴くような声で『私は慰安婦ではなかった。あれは友達の証言です』と証言したときのことを昨日のことのように覚えている」と書き込んだ(朝鮮日報5月8日付)。「李氏はニセモノ」とばかりに反撃するつもりで書きこんだのかもしれないが、オウンゴールに等しい行為に失笑する向きも少なくないようだ。

そもそも、なぜこの時期にこんな騒動が起きたのだろうか。日本国内では、2014年に朝日新聞が慰安婦問題についての一連の報道について誤報を認め、記事を取り消す謝罪会見を開いたが、2017年に発足した文在寅政権は慰安婦像の違法設置を進め、さらに日本側の怒りに油を注ぐかのように「徴用工」問題を蒸し返した。

4月の総選挙にも圧勝した後は、現政権はいわゆる「親日賛美禁止法」まで議会に通そうという勢い。日本からすれば、もう関わりたくないという「韓国疲れ」や、仮に関わっても、日韓間の通貨スワップも含めて、デメリットしか感じられないというのが一般通念のようだ。

韓国国内で昨年から続出している「反日」とは逆の動き

ところがその一方、韓国の市井からその流れを引っ張り戻すような動きが昨年からいくつも持ち上がっている。昨年6月5日にはソウル市中心部で、「今日の集会は反日民族主義に公然と反対する史上初めての集会」として、慰安婦の少女の像の設置や韓国の差別主義的な反日活動に反対する集会が開かれた。

また同7月に韓国人教授が、韓国を「嘘つきの国」と断じ、日本統治下で虐げられたという韓国左派の通念とは正反対の事柄を列記した『反日種族主義 日韓危機の根源』を上梓し論議を呼んだ。日本でも翻訳されて(文藝春秋刊)、ベストセラーとなるなど、日韓双方で大きな話題となった。

同10月には文在寅大統領の退陣を求めて、ソウルで20万人! が夜を徹してのデモを行っているし、12月には韓国で製作された徴用工像のモデルが実は日本人であったとして、当の像の作者が名誉棄損の裁判を起こしている。こうした出来事が、日韓関係をよい方に向かわせる力となるのかはわからないが、その行方は日韓2国の関係だけでは見えてこない。