米・中・欧と多極化に向かい世界経済の不安定感は高まる
米中の対立は、自由資本主義と国家資本主義の覇権争いだ。IT先端分野での成長や感染対策などを見る限り、中国の国家資本主義体制のほうが米国の自由資本主義体制よりも有利との見方は増えやすくなっている。
他方、中国を警戒する国も増えている。2017年、ドイツは安全保障などを理由に外資による買収を規制し、翌年には中国企業による精密機械メーカーの買収を阻止した。その上、中国を震源に新型コロナウイルスが世界に広がり、対中不信、批判を強める国は増えている。
欧州委員会は医療物資などの対中依存を問題視し、中国企業による買収を念頭に外資規制を強化している。欧州が米中とどのような関係を目指すかは見通しづらい。
今後、中国になびく国、中国への警戒を強める国は増えるだろう。EUでは英国の離脱が進み、感染対策を契機に加盟国間の政治連携は難しくなっている。そうした状況は、冷戦終結後、米国を基軸国家として進んだグローバル化が分水嶺を迎えたことを意味する。国際社会は多極化に向かい、利害調整は一筋縄にはいかなくなる。これまで以上に世界経済の不安定感が高まるだろう。
日本は混迷の国際社会でどれだけ発言力を持てるか
わが国に求められることは、米国とは安全保障を中心に、中国とは経済を中心に等距離感覚の関係構築を目指すことだろう。同時にわが国はEUとの連携を進め、国際社会での発言力の向上にも取り組む必要がある。今後の成長が見込まれるアジア新興国などとの関係強化も欠かせない。
また、国内経済に関して、機械、自動車産業を重視してきたわが国は、産業構造を変換させデジタル化という大きな変化に対応しなければならない。そのために、政府の構造改革の重要性は増している。
口で言うほど容易なことではないが、そうした取り組みを政府が粛々と進めることが、米中の対立が激化し経済の不安定感が高まる状況に対応し、国力を引き上げるために必要だ。