コロナ対策を徹底するラブホも

利用者の9割がリピーターだという、埼玉県東松山市のラブホテル『ホテルパークイン』支配人はこう話す。

「うちも売り上げは3割減で厳しい状況ですが、リピーターさんに支えられてなんとか持ち堪えています。コロナ対策として、客室やロビーなどの除菌清掃はもちろん、エレベーターのボタンもお客様が利用するごとに除菌しています。そういう従業員の清掃風景をご覧になると安心してくださるのか、また来てくださるようです」

コロナ対策を徹底するラブホテルが増えている。
コロナ対策を徹底するラブホテルが増えている。(写真=筆者撮影)

同ホテルでは、客室清掃のたびに十分な換気を行い、コロナ感染症対策を踏まえ、ウイルス対応型アルコール除菌剤による清掃を徹底している。また、客室には除菌効果のあるハンドソープや、ウイルス、菌の働きを99.99%以上も抑制するVBおしぼり(「VB」は、東京工業大学と慶應義塾大学発の合同ベンチャーとFSXの共同研究によって生まれた抗ウイルス・抗菌を安全にかなえる特許技術)を置くなどして、ホテルの取り組みをホームページや外看板にて周知している。

「面白いと感じたのは、皆さん、19時や20時になると自宅にお帰りになることです。ホテルなので24時間営業なのですが、お客様は他の時短営業している飲食店と同じような感覚で利用してくださっているのでしょうね。夜は不要な外出を控え、自宅で過ごされているのだと思います」(同ホテル支配人)

繁盛するラブホテルには共通点がある

仏教に由来することわざに『地獄極楽裏表』というのがある。

大きさも人数も同じ「地獄湯」と「極楽湯」。ともに超満員だが、地獄湯では、やれ足を踏んだ、湯がかかった、肘でつつかれたなどと争い、殴り合いの喧嘩が絶えないのに、もう一方の極楽湯は皆が和気あいあいとしており和やかである。

コロナ対策に力を入れる、埼玉県東松山市のラブホテル「ホテルパークイン」。
写真=筆者撮影
コロナ対策に力を入れる、埼玉県東松山市のラブホテル「ホテルパークイン」。

なぜなのか? それは、極楽湯ではみんなが他人の背中を洗ってあげて、まるく輪になっているから。狭いなかでもお互い肘がぶつからないように仲良く平和にやっている。それに対して地獄湯では、全員が自分の背中を洗おうとしているからぶつかるのである――という、「置かれた状況が同じでも、心の持ちようで地獄にも極楽にもなる」という例え話なのだが、これはつまり、自己中心的な世界と、思いやりに満ちた利他の世界の話である。

これまで、コロナ禍でダメージを受けているホテル、受けていないホテルをいくつか取材してきた。14年近く評論家として全国のオーナーさんたちと接してきて、繁盛しているホテルには共通していることがあると気付いた。それは、顧客満足度の高いラブホテルは、利他の精神を持っている、ということだ。利他の精神は、お客様に対してだけではない。