コロナショックと社会常識の変化
これまで、映画を楽しむためには映画館に行くことを当たり前=常識と考える人は多かっただろう。人気の作品となると、前売り券を手に入れて少しでも良い席で、ダイナミックな音響に包まれながら作品の魅力を味わおうとする人は多かった。
しかし、新型コロナウイルスの感染拡大によって、こうした常識が覆されはじめている。大きな要因と考えられるのが、人との接触に不安を覚える人が増えたことだろう。その結果、経済全体で需要が急速に落ち込み、所得・雇用環境が悪化している。
米国では、トランプ政権が経済活動を段階的に再開しているにもかかわらず、新規に失業保険を申請する人は歴史的高水準にある。4月、米国の失業率は第2次世界大戦後最悪の14%に達し、非農業部門の雇用者数は2050万人減少した。
韓国のように感染が小康状態になったと見られたのち、再度、集団感染が発生していることも人々の不安心理を高める。その影響は、映画館業界に限らず、各国の経済全体にかなりのマイナスの影響を与える。
オンライン配信で売り上げの8割を手にする
そのような中、従来のビジネスモデルを転換し、生き残りとさらなる成長を目指す企業が増えている。これまで映画業界では、ワーナーやNBCユニバーサルなどの映画製作会社が新作を映画館に供給し、作品が上映されてきた。この場合、作成側の取り分は売り上げの50%程度といわれる。
リーマンショック後、大手ITプラットフォーマーは動画配信の強化に取り組んだ。ネットフリックスのように自社作成のコンテンツを配信し成長するプラットフォーマーも登場した。それが映画の楽しみ方を変化させはじめた。
競争の激化などに対応するため、映画製作会社はオンライン配信を強化した。この場合、製作側は売り上げの8割程度を手にすることができるとみられ、映画館に新作を供給するよりも収益性が高い。
その上にコロナショックが発生し、オンライン上での視聴需要が急増している。この結果、映画館は苦境に直面すると同時に、映画の楽しみ方が一段と変化している。