「今は、昔の大学院入試のイメージからすると、信じられないくらい簡単に大学院に入れるようになりました。試験科目も研究計画書の提出と口頭試問のみという研究科が一挙に増えましたからね」

こう語るのは、日本で初めて大学院入試向けの講座を始めた中央ゼミナール教務部部長の宍戸ふじ江氏。

1990年代以降、「大学学部以上の専門教育を重視する」という国の大学院重点化政策に沿って、学部を持たない独立した大学院が急増。しかし、バブル崩壊後の景気悪化などによる経済的な事情や将来的な展望の薄さなどの理由により、大学院に進学する学部生はさほど増えなかった。学生が集まらないと国からの補助金も減ってしまう。そのため、大学院のハードルを下げてでも入学者を募集することになった、というのが内情だという。

同ゼミナールの講師で『「学歴ロンダリング」実践マニュアル』の著者でもあり、大学院進学のエキスパートとして数多くの受験者を指導してきた赤田達也氏は、今の状況を「省エネ入試」と表現する。

「以前は大学院というとアカデミックな印象が強かったと思います。大学で猛勉強し、専門分野の知識と語学でいい成績を収めた人じゃないと入れないという印象がありました。今はそういう研究科は文学部などごく一部です。大学院のハードルが下がったために、MARCH卒の人は早稲田・慶應に、早慶卒の人は東京大学へとランクが上の大学院を希望する人が多いのが現状です」(赤田氏)

また、一般的に大学院には、4年制の大学を卒業した人しか行けないというイメージがあるが、今はそうでもないという。

「資格審査で受験者の社会人経験や実績が“学歴に相当する”と認められれば、高卒でも受験できる研究科も少なくありません。資格審査は書類審査に加え、面接や小論文が必須なところもありますが、書類提出だけでいいところもあります」(宍戸氏)

ただし、高卒で大学院に入る場合は、職歴が重要になるという。

「ある40代女性は短大卒ですが、NPOで活躍した職務経験が評価されて資格審査を通り、立教大学のMBAに合格したという例もあります。看護学校を出た看護師が病院での勤務内容を評価されて大学院に入れた例も。教授から評価される仕事をしていれば、アルバイトでも大丈夫なこともあります」(赤田氏)

早慶でも入りやすくなっている

総じて受かりやすい傾向にあるのは早慶の大学院も例外ではない。以前と比べれば入学のハードルが格段に下がっている研究科も多数存在するという。ではどのような研究科が狙い目なのだろうか。

「全般的に、大学受験と同じで、新設や時代のニーズとあっていない研究科は学生集めに必死です。そういう研究科は入りやすいといえるでしょう」(赤田氏)