東京はこれからも「激戦区」であり続ける

国公立は長崎大学を除いて合格率は7割を超えているが、私立大学はピンキリで、最下位の奥羽大学は3割程度しか合格者を出していない。東京歯科大学や日本歯科大学(新潟)は偏差値のわりに高い合格実績を残しているが、松谷氏によると、そのような大学は「歯科治療、知識をより効果的に習得できる教育カリキュラムが組まれていると考えられる」のだそうだ。

国公立の偏差値が高い理由は単純で、学費が相対的に安価で志望者が多いからだ。入学金や授業料、施設設備費などを含めた6年間の学納金は約350万円で統一されている。一方で、私立大学は2000万~3000万円と桁違いの高さだ。たいていの受験生は国公立を第1志望で受けるので、必然的にレベルが高くなる。

「国公立に関しては、偏差値や国家試験の合格率は今後も変わらないと思います。ただ、私立に関しては、国家試験合格率が高い大学により人気が集中して、さらに二極化が進んでいくと考えられます」と松谷氏は予測する。

歯学部入試では国公立が圧倒的人気であることはわかったが、歯科医師が開業するにあたっての「激戦区」はどこの地域なのか。図2は都道府県別人口10万人あたりの歯科医師数のグラフである。全国平均が80.5人なのに対し、東京都が115.9人と最も多く、次いで徳島県107.6人、福岡県103.5人となっている。逆に、人口10万人あたりの歯科医師数が最も少ない「穴場」な地域は54.9人の滋賀県で、次いで、青森県55.6人、島根県56.2人と続く。

都道府県別、人口10万人あたりの歯科医師数

「論理的に考えれば、開業して成功したかったら、人口に対して歯科医師数が少ないところを選びますよね。しかし、そのような地域の歯科医師数が一向に増えないのはなぜか。実際のところ、例えば自分が東京出身の場合、縁もゆかりもない地方で開業しようという考えには、やっぱりならないのだと思われます。ですから、地方出身者が地元で『Uターン開業』をするパターンはありますが、ライバルが少ないからという理由で、地方で開業する人は、実はほとんどいないですね。そのため、都道府県別の開業分布は10年後もほぼ変わらないと思います」(松谷氏)