口の中をきれいにしないと心臓病の発症に関わる

「『Floss or Die(フロスか死か)』という言葉が掲載されました。フロスが良いというよりも、口の中をきれいにしないと心臓病の発症に関わるということが当時先駆け的に発表されたのです。歯肉の出血などから口腔内細菌が血流内に入り込み、血栓(血のかたまり)の形成に関与していると考えられます」

口腔内の菌の代表格は「歯周病菌」。この歯周病菌によって炎症が引き起こされた状態を「歯周病」といい、40代以上の日本人の大半がかかっているといわれる。原因は、歯周病菌に弱い遺伝的体質やホルモンバランス、喫煙、歯ぎしりなどもあるが、大半は歯についた汚れ、つまり口の中の衛生状態が悪いことによるもの。

歯周病はさまざまな全身疾患と関連があるが、とりわけ「糖尿病」と関係が深い。長年シンガポールでの治療経験がある小川原元成医師(池袋西口小川原デンタルクリニック)の話。

「歯周病菌が増えると、血糖値を下げるインスリンの働きを阻害するといわれています。ですから糖尿病と歯周病は双方が症状を悪化しあってしまうことがある。一方で20年間、糖尿病を患っていた人が歯周病の治療をしたら、内科医が驚くほど劇的に糖尿病が改善した例もありました」

血管内壁が厚くなり、血流が悪くなる「動脈硬化」も、その原因に歯周病菌の存在が指摘されている。血栓によって血管が詰まる「脳梗塞」も同様だ。図に全身疾患との関係をまとめた。痛みなどがない歯周病だが、いかに幅広く影響しているかがわかるだろう。

口腔内の環境が悪くなると、全身に危険が及ぶ!