地元客、国内客という巨大市場をいま一度考え直すとき

人の目は、どうしても新規で成長する市場に向きがちです。それに地方を訪れる訪日外国人は、日本人観光客には今や少ない団体旅行という形も多い。商売をするには、アジア系訪日外国人旅行客は非常にやりやすい相手だったといえます。

その一方で、市場の8割を占める日本人による内需をないがしろにしていたことに、あらためて日が当たるようになっています。つまり外ばかり見ていたけど、国内観光客はすごい多かった、ということです。

近隣の人たちが遊びに来る日帰り旅行に限定しても4兆7000億円の市場規模があり、インバウンド消費の4兆5000億円より大きいのです。今は外出制限などあるので、そもそも国内需要を増やすのも難しいでしょう。しかし、コロナショックの回復期を考えても国際的な人の往来が復活するのはまだ先のことです。まずは、近隣となる日帰り旅行が一部可能になり、その後に国内での宿泊観光、そして海外からの観光という流れになっていくことでしょう。

だからこそ地方は、今回のコロナショックで海の向こうから来る客だけでなく、地元客、国内客という巨大市場が近くにあるということをいま一度考え直すときだと思います。

「オンライン化」で従来型の商圏に縛られない商売が可能に

さらに今、都市部ではインターネット環境をベースにしたリモートワーク態勢の構築が急速に進められています。これまで、さまざま理由をつけて無理と言われていたことが続々と可能になりつつあります。たとえば、都市部に住み、毎日オフィスに通勤し、そこで働くしかなかったという状況が変わりはじめています。

これは今後、住居とオフィスという不動産にも大きな影響を与え、地方にとっては新たな住まい方、働き方に対応したビジネスの可能性を感じます。少し前から全国にある複数の住居をみんなで共同利用するという「マルチハビテーション(多拠点生活)」のサービスや、サテライトオフィスが注目されていましたが、地方ではそれらがより拡大していくでしょう。

さらに、自宅にこもる時間が増えることによって、家の中からインターネットを通して注文するオンライン需要は拡大しています。幸いなことに、都市部の人がインターネットの仕組みを使えば使うほどに、地方にもチャンスが訪れます。

東京都「東京都生計分析調査」(令和2年1月)によると、2人以上の勤労者世帯の消費支出は1世帯あたり34万6351円と出ています。これらの多くが地域内で消費されていたものの、外出自粛によって都内の店舗などでの購買から一部でもオンラインで購買することに回ればそれは非常に有望な市場と言えるでしょう。

これまで地方の人が都市部の市場を狙うためには、基本的には都市部に出店する必要がありました。それが都市部の人の働き方が変わりオンライン化が進むことで、地方にいながら都市部の市場を攻める、つまりは従来型の商圏に縛られない商売がさらに可能になっていくでしょう。