現場の意思決定者のほとんどが男性

なぜ「子育て=ママ」という構図になるかといえば、それはテレビの現場に女性の数が少ないからです。

何回も記事に書いていますが、メディアの現場の意思決定者はほとんどが男性です。

日本のマスメディアは政府と同じぐらいダイバーシティが働かない場なのです。東京のキー局を調べたところ、現場の女性デスクは0%という状況が続いています(民放労連女性協議会)。キー局全体でも女性社員は2割程度です。つまり「何がニュースか、何を報じるべきか」を決めるのは男性に偏るという「同質性のリスク」があるのです。

在京テレビ局の報道部門、制作部門、情報政策部門の局長に女性は一人もいない

新聞のほうはどうかと言うと、女性記者の割合は21.52%。デスクなど管理職は8.59%です。改めて可視化すると、マスコミにいる女性のなんと少ないことか。

なぜ、報道現場は男性ばかりになるのか?

採用の時点で女性は少ないのですが、それは24時間、365日コミットすることがデフォルトであり、評価されるという「硬直的な働き方」とも関係があります。

思いのほか大きい「同質性のリスク」とは

なぜジェンダーバランスの偏りが悪いことなのか?

それは「見落とし」が多いからです。私はこれを同質性のリスクと呼んでいます。例えば特許でも、男女混合チームで得た特許のほうが、その後稼げる特許になっているという統計があります。つまり、混合チームの特許のほうが、多くの人のために役立つ特許になっているということです。

ジェンダーについてもよく発信されているアーティストのスプツニ子さんは、男性が多いテクノロジー業界の状況についてこんなことを書いていました。「研究の世界でも、ビジネスの世界でも、『みんなを幸せにしたい』という言葉はよく聞くけれど、『みんな』って誰なんでしょう?」

理系エンジニアは男性中心の世界。「みんな」と言ってもどうしても取りこぼしが起きる。

「テクノロジーは進化し、人間は月面に降り立って遺伝子まで編集できるようになった。それなのに、私が毎月つらい思いをする生理の問題が野放しっておかしくない?」とスプツニ子さんはそんな問題に気づいています(エンジニアtype 2020年3月5日)。

テクノロジーの世界に女性が少ないのは、女性が応募しないから、女性エンジニアが少ないからだけでしょうか?

アマゾンがAI採用を実装した時に、過去男性エンジニアばかり採用してきたデータを使っていたので、「女性は採用しない」という無意識のバイアスがかかる結果となりました。この採用システムは「女性を差別するという機械学習面の欠陥が判明し、運用を取りやめる結果になった」と報じられていました(ロイター2018年10月11日)。