実は「問題文を読んでいない」子どもたち

私は40年以上、中学受験にかかわってきましたが、ここ数年、中学受験生の様子がますます「アタフタ」してきていると感じています。

大きな特徴として挙げられるのが、「問題文を読まない子どもたち」です。

「問題文を読んで問題を解くのは当たり前だ」と思われるかもしれませんが、実はそうではない子がとても多いのです。

私はどのご家庭へうかがったときも、お子さんの隣に座ります。隣にいると、どんな鉛筆の持ち方をしているか、どんな字をどんなスピードや筆圧で書いているか、視線はどこに向かっているかといったことが一目瞭然だからです。

アタフタしている子は、算数の問題を一瞥しただけで解き始めてしまいます。私も初めて解く問題を「これを解いてごらん」と見せ、私が隣で問題文を読み始めたときにはもう計算式を書き始めているという具合です。「多分これは○○算のはずだ」と当たりをつけているのです。子どもの目の動きを追ってみると、数字だけを拾っているのがわかります。

「先へ、先へ」と急いで解いている

難関校の算数は問題文の長いものが少なくありませんが、そうした問題の場合もほぼ流し読みをしています。スマホの画面をスクロールして、目についた情報だけを拾い読みしているような読み方ですね。

視線は常に「先へ、先へ」と急いでいます。そのため、問題を解くために必要な条件や正解へのヒントを読み落としてしまいます。

目の前の問題を解きながら、何かに追われているかのように、視線も気持ちももう次の問題へ向かっているような読み方です。

勉強に対するモチベーションのある子は、そのように「アタフタ」しながらも問題を解こうと真剣に向き合っているのですが、やる気のない子の場合は、「この嫌なことはどこまで続くんだ」という表情を浮かべながら「先へ、先へ」と急いでいます。急げばこの嫌なことを終わらせられると思っているのです。

どちらのケースでも、自分1人で勉強しているときに、親御さんの目を盗んで答えをササッと写し、「終わったよ!」とごまかすようなことをよくやります。