「全棟検査」は昨年10月いっぱいでほぼ一巡した

——2月に入ってレノ側が保有比率を引き上げて15%を超え、レノはレオパレスに対して解散請求権を持つことになった。解散請求権をテコに事業譲渡に向けて揺さぶりをかけてくるのでは。

「われわれはオーナーとの契約期間や関係を長期的なものと考えており、レノ側はそうした時間軸は考えておられないのは明明白白。今回は臨時株主総会だが、定時株主総会に向けて何らかの提案があることも想定している」

——第3四半期決算の数字を見ると、補修工事関連の特別損失は計上額が少ない印象がある。

「各決算において特損の引当金については監査法人と協議し、数字を出している。これから大きな規模の損失が出てくるかと言えば、目の前に大きなものが見えているわけではない。全棟検査は昨年10月いっぱいでほぼ一巡しており、われわれが管理していない物件の中に若干遅れがあるが、わずかな数になっている」

借り入れのあるオーナーの間には不安が広がっている

——レノに食いつかれたことで入居率に影響は出ているか。

「今の段階ではさほど影響は出ていない。界壁の問題で一昨年に入居率に大きな影響が出始め、特に昨年の2月に充填剤や界壁の問題でかなりお騒がせし、入居率が伸び悩んだ。しかし当社はニッチな事業領域で、その中で差別化ができていると自負している。特に全国企業では社宅の契約を個々の家主と交わすと、書類は増え、不動産屋への手数料も支払わなければならず、振込先もバラバラで大変な手間がかかる。当社であれば至る所に物件があり、事務面も含めて一括的に請け負っている。

レオパレス21の宮尾文也社長
撮影=プレジデントオンライン編集部
レオパレス21の宮尾文也社長

これがもし村上氏側が経営権を握るようなことになると非常に憂慮せざるを得ない。私自身、顧客に会うとこの話になって“どうなの?”と聞かれるが、経営権を握られればそれだけでは済まない。資産を外部にどんどん売却するようになればオーナーの間にも動揺が広がるだろう。

顔の見えない会社にならないように各地で“オーナー会”という説明会を開いている。レオパレスでアパートを建てて15年、20年とやってきている中で家賃の問題もあったが、一定の信頼感や積み上げてきたものがある。これが来年、再来年も同じようにできるか。家賃の決め方も地域ごとの数字をお見せしながら話し合っているが、間には(レオパレスの)人間が入っている。

しかし事業売却などをしてしまえば、オーナーにとってはその人間がいるかどうかわからないし、やり方もどうなるかわからなくなってしまう。オーナーの間にはそうした不安感がある。オーナーはアパート建築のために借り入れもしているし、返済がきちんとできるかどうか、不安が拭いきれないところだと思う」