いまや3人に1人ががんにかかる時代だ。いざ自分が、家族ががんになったら──。3組の夫婦から生きることの喜びを学ぶ。

樋口さんの場合、入院する直前に上司の本部長からいわれた「君の席は空けて待っているからな」という一言が職場復帰への原動力になった。

当時の樋口さんには20人ほどの部下がいた。事務的な仕事なら彼らにも割り振ることができる。しかし、企画管理室長の最も大切な仕事は、新事業を創出して軌道に乗せていくこと。社長から「黒字になるまでには、どの程度の累積赤字を覚悟したらいいか」と質問があれば、即答しなくてはならない。回答次第で、新事業立ち上げの成否が決まることもある。

そんな荷の重い仕事まで部下には任せられない。先の本部長の言葉の裏には「私が引き受ける。下した判断にも責任をとる」との覚悟が存在していたのだ。当然、リスクを抱え込む。「辛抱して待っている」という本部長の気持ちを思うと、「がんを乗り越えてやろう」という思いが湧いてきた。