社長が「くじ引き採用」という“跳んだ”案を出した理由

【澤田】実は私は昨年(19年)の1年間、人財開発部門を担当したんです。

【白河】澤田社長ご自身がですか?!

【澤田】はい。人財開発部門統括の担当の役員もいるんですが、私も担当になって、1年間議論をしました。担当役員はやりにくかったかもしれません(笑)。最初は非常に「跳んだ」議論から始めてからまとめに入っていきました。

【白河】「跳んだ」と言いますと、どんな?

【澤田】例えば、採用するときは何段階も面接を繰り返すわけですが、それは必要ないのではないか。最低基準のボーダーさえ超えていれば、誰を採用してもいいのではないか。そこから先は、極端な話、例えば、くじ引きで決めてもいいのではないかという議論をしました。

もっといろんな個性を持った人に来てほしいなら、それくらいしてもいいかもしれない。今のやり方だと「とがった人財を落としている」ことになりかねません。

【白河】どこの会社も“とんがった人”が欲しいとは言うのですが、それが実現できる採用活動になっていないという問題がありますね。

【澤田】入社した後に多様にするのは難しいのです。それに、会社には運がある人が必要です。くじ引きで当たった人というのは、運がいい人ですからね。でも、これを言ったら、人財開発部門の人たちは「さすがにちょっと時間をください……」と青くなっていました(笑)。

【白河】それが本当に実現したら、おもしろい人材が集まりそうですね。澤田社長の「多様性」に対する強い思いを感じました。

構成=大井明子

澤田 道隆(さわだ・みちたか)
花王社長

1955年、大阪府生まれ。81年大阪大学大学院工学研究科修了後、花王石鹸(現・花王)入社。2003年サニタリー研究所長、08年取締役執行役員を経て12年より現職。

白河 桃子(しらかわ・とうこ)
相模女子大学客員教授、昭和女子大学客員教授、ジャーナリスト

相模女子大学客員教授。慶應義塾大学卒。働き方改革、ダイバーシティ、SDGs、女性活躍、ジェンダーなどがテーマ。「男女共同参画会議専門調査会」専門委員、「働き方改革実現会議」有識者議員などを務める。『ハラスメントの境界線 セクハラ・パワハラに戸惑う男たち』(中公新書ラクレ)、『御社の働き方改革、ここが間違ってます! 残業削減で伸びるすごい会社』(PHP新書)など著書多数。