時短とフルタイムの軋轢をどう克服するか
【白河】花王では、1991年に育休や時短の制度ができていますね。
【澤田】導入した当初は、取得する本人にも周囲の人にも、抵抗があったと思います。でも、そこで育休や時短を取りながらも成果を出して頑張った女性たちがいたから今がある。彼女たちが今、そろそろ定年を迎えるころに入っています。中には管理職に就いた人もいます。花王の「ステップ1」を支えてくれた人たちです。誇りに思っています。
【白河】時短勤務ができるようになって、ようやく女性が出産した後も仕事を続けられるようになってきました。法律で時短が措置義務になったのは2010年ですから、私は、「女性が働き続けられるようになってからやっと10年なのだ」と感じています。
ただ一方で、時短勤務の人とそうでない人の間で、軋轢が生じるケースも多いように聞いていますが、花王ではいかがでしょうか?
【澤田】部署によるでしょうね。例えば化粧品販売の現場で、お客様の接客を担当する美容部員という職種の方々がいるのですが、そこはシフト勤務なので、時短勤務で人が抜けると、残った人の負担が大きくなってしまうという問題があります。そうした場合は、人を増やして、時短勤務の人がいても負担なく回せるように対応を進めています。ただ、まだすべての現場で対応しきれているわけではありません。
一方、和歌山工場の品質保証検査を担当している部署には、女性社員が多いのですが、時短で勤務が終わる午後4時以降にも、検査対象のサンプルがまだ届くことがある。それは、サンプルがお昼ごろまでに届くよう、やり方を変えるだけで回るようになります。サンプルを準備する側は、化学合成を行ってできあがったものを検査に回すのですが、それなら化学合成を始める時間を早めればいいわけです。
【白河】女性を特別扱いするのではなく、全体の働き方を見直すのですね。時短の人もそうでない人も軋轢なく働けるようになります。
【澤田】そうです。そこの部署だけでは対応に限界があります。部分だけを変えるのではなく、全体を変えないとダメですね。
男性の働き方改革が必要
【白河】同様に、女性活躍を進めるためには、女性の働き方だけでなく、会社全体、男性の働き方も変える必要があります。
【澤田】その通りだと思います。今、花王の男性の育休取得率は42.6%で、まだまだ高めていかなくてはなりません。長期で取る人はまだ少なく、平均が6.5日です。
ただ、「いつ、これだけ休みを取りなさい」と細かい制約を設けるのには違和感があります。それぞれで考えて、ライフスタイルに合ったやり方を考えて選べばいい。管理する側は、細かい制約を設けた方が管理しやすいかもしれませんが、それでは多様性を活かすことなんてできません。
【白河】今はかつてのような一律の管理は通用しないでしょうね。一方で、人事や人材開発を担当される方は大変になりますが。多様性マネジメントは負荷がかかることは事実です。