「東京五輪もOK」カーボンプレート1枚、靴底厚さ39.5ミリ
昨年10月、ウィーンで行われた非公認レースでケニアのエリウド・キプチョゲが人類初の2時間切りを果たした際に着用していたシューズの市販モデルになる。カラーリングは大きく異なるものの、性能はキプチョゲが履いていたものとほとんど同じだという。
このアルファフライ、一連の報道では「東京五輪では使用できないだろう」という見方が多かった。カーボンファイバープレートを3枚搭載しているという噂が流れ、靴底も基準ラインと予測された「40mm」を越えているように見えたからだ。
しかし、ナイキはまるでこの新規則を見越していたかのような“絶妙なライン”を突いてきた。アルファフライのカーボンファイバープレートは1枚のみで、靴底の厚さは39.5mm。新規則には抵触しないのだ。
米国では五輪マラソン選考レースのある2月29日に発売されるという。日本での販売は春になるようで、東京五輪でも使用可能となる見込みだ。
「複数のプレートを靴底に内蔵してはならない」と「靴底の厚さは40mmまで」という新規則はアルファフライがターゲットにされたようなものだったが、ナイキはこれを乗り越えたことになる。他メーカーからすれば“神業”に見えたのではないだろうか。
「期限は4月上旬」他メーカーは新規定のシューズを出せるか
それどころかアルファフライは「レースの4カ月前から一般購入できること」(医学的理由などでカスタマイズされたものは許可される)という新規則もクリアしている。このルールは他のメーカーにとっては重い負担になりそうだ。
東京五輪のマラソンは男子が8月9日で、女子が同8日。本番で使用することを考えると、4月上旬に一般発売しないといけない。しかし、ランニングシューズは、マラソンシーズンに入る前の夏ごろに新モデルを発売することが多い。このパターンでは東京五輪での使用はできないことになる。たとえプロトタイプができていても、大量生産する市販品をすぐ店頭に並べることはできない。今回の新規則は各メーカーの営業計画に大きな影響を及ぼすと考えられる。
またアシックス、ミズノなどはこれまで有力選手に別注シューズ(カスタムシューズ)を提供してきた。1月下旬に行われた大阪国際女子マラソンで日本歴代6位の2時間21分47秒をマークして、日本陸連の設定記録を突破した松田瑞生(ダイハツ)はシューズ職人として有名な三村仁司氏が手掛けたニューバランスの別注シューズを履いていた。しかし、今後は医学的理由がないとカスタムしたシューズを履くことができなくなる。
その点、ナイキはキプチョゲだけが特別で、大迫傑、設楽悠太、中村匠吾、服部勇馬ら契約選手といえども、市販のシューズを履いて結果を残してきた。今回の新規則で、ランニングシューズ市場を“独走中”のナイキがライバルたちをさらに引き離すような展開になりそうだ。