災害発生時、電話は混み合い、メール配信は遅延する。思うように連絡がとれない。その時どうするか。まずは「災害用伝言板」と「緊急地震速報」について確認しよう。
3年落ちの携帯電話は「緊急地震速報」に未対応
災害時、携帯電話はつながりにくくなる。通信事業者が通話を処理しきれなくなると判断した場合、一定割合で発信を受け付けない「発信規制」も行われる。今回、ドコモは最大80%の発信を規制した。その後、徐々に混雑や不通エリアは解消されてきているが、キャリアで大きな差が出た。情報通信に詳しいコンサルタントのクロサカタツヤ氏はいう。
「ドコモ、KDDIに比べて、ソフトバンクより小さな事業者では復旧が遅れた。移動基地局や電源車といった設備の差が大きい。ただし事業者の責任を問うのではなく、有事を想定したスペックを備えるべきかという議論を深める必要がある」
携帯電話は音声通話とデータ通信とで通信方式が異なる。通話は不能でも、ネットを使えば連絡の取れることがある。慶應義塾大学の村井純教授はいう。
「回線交換型の電話では、緊急通話を優先させると発信規制などをせざるをえない。ネットのデータ通信はパケット通信型なので、混雑時には通信速度は遅くなるが、通信そのものは途絶しづらい」
混雑時、携帯電話のメールでは配信に遅延が発生する。迅速な安否確認には、直接やり取りするのではなく、外部のサーバーにデータを残す方法が確実だ。
NTTなどが提供する「災害用伝言ダイヤル171」では登録した電話番号に伝言を残せる。ただし被災地内の固定電話が優先され、被災地外や携帯電話は後回しになる。一人一台で携帯電話があるならば「災害用伝言板」のほうが便利だ。ネット上で電話番号を入力すれば、5社一括で伝言の有無を確認できる。複雑な登録も必要ない。災害時にはいち早く安否情報を書き込んでおきたい。
緊急時には、公衆電話からの着信も予想される。当然、発信者の電話番号は通知されない。「番号非通知」の着信を拒否していると着信を受けられないため、あらかじめ設定の変更が必要だ。
同じ携帯電話を3年以上使い続けている人には買い替えを勧めたい。災害時には、「緊急地震速報」と「ワンセグ」が非常に役立つからだ。
気象庁などが運用する緊急地震速報は、初期微動を検知して、主要動が来る前に地震を知らせる。世界でも日本にしかない最新技術で、東日本大地震でも的中した。ドコモは2007年12月、auは08年3月以降の機種の多くで、ソフトバンクは09年9月発売の「831N」に速報を受けて鳴動する機能を搭載している。ワンセグは、06年12月に全国で始まった携帯機器向けのデジタル放送。避難場所や停電時でもテレビが見られる利点は大きい。
今回の震災で初めて試みられたのが、テレビのネット同時配信だ。被災地に向けてNHKなどの放送が「ユーストリーム」と「ニコニコ動画」で公式に配信された。ラジオでも、すでにサービス中だった「ラジコ」の地域制限が解除された。ネットに繋がる端末があれば、テレビやラジオがなくても、視聴ができる。
ただし電源が確保できないところでは、電池に注意が必要だ。ネット配信では高速の通信を行うため電池消費も激しい。ジャーナリストの西田宗千佳氏はいう。
「スマートフォンは電池の容量に不安がある。緊急地震速報に未対応の機種も多く、災害時に有利だとはいいきれない」