【白河】働き方改革以降、管理職の残業時間が1.5倍になったというデータもあります。

【佐藤】会社は、時間当たりの貢献や、新しいことを考えたことで部下を評価するようにと部下に言うけれど、変えられない管理職が多い。管理職の部下評価の基準をを変えるべきです。

【白河】女性活躍研修の前に、管理職研修が先のような気がします(笑)。

――最近話題の男性の育休は女性活躍に効果がありますか?

【白河】パートナーの男性が育休を取ることも大事ですが、自社の男性が育休を取ることも大事。社内のライバルは男性ですから。同僚男性も育児をすることでフェアになります。

時間制約がある働き方を経験

【佐藤】男性の育休取得だけでなく、キリンの「なりキリン ママ・パパ研修」は、いい制度です。誰もがひと月、時間制約がある働き方を経験し、たとえば保育園のお迎え時間にリミットのある社員の状況を、全員が理解できるようにするといった試みです。それでキリン全体の残業は51%も減ったそうです。

【白河】急に管理職にと言われても困るという女性の戸惑いも目立ちます。ある研究では、管理職の部下への期待は、男女でも差があり、時間制約が入るとまた差が出てくる。

【佐藤】無意識の行動です。基本的に目の前にいる人の属性、例えば6時間勤務、女性、子育て中というだけで、部下への対応を決めないことです。部下に希望を聞けばいいわけです。

【白河】逆に男性だからといって“海外勤務いつでもOK”ではない。大和証券グループ本社取締役副社長の田代桂子さんにインタビューしたところ「男性もいろいろな働き方や生き方ができるようにならなければ本物だとは言えない」と。

【佐藤】今は部下も変化している過渡期です。単線的なキャリアに乗るしかない男性が多いのも問題です。元々、管理職になると部下マネジメントのヒューマンスキルが必要になります。部下に意欲的に働いてもらうためのスキルで、部下が多様化したため、昔の管理職よりも現在はより高いヒューマンスキルが求められています。これまでは、テクニカルスキルはあってもヒューマンスキルがない男性が管理職になっていました。ヒューマンスキルに関していえば、女性のほうが高い可能性がある。

――女性を育成するために気をつけることは何でしょう?

【佐藤】管理職が、プラスだけでなく、マイナスのフィードバックをすることが大事ですね。男女の別なく褒めることはやっていても、男性に比較して女性へのマイナスのフィードバックが少ない男性管理職が多いのです。

管理職研修で部下の育成プランを書いてもらうと、男女ではっきりと違う。男性には長期の視点で育成を考えていても、女性にはそれがないのです。悪気があるのではなく、長期の育成プランを考えても、結婚や出産のライフイベントあるかもしれないと、長期の育成を考えないのです。男性だって妻の仕事があるから「転勤なら退職します」と言い出すかもしれないのに、まったく想像できていない。