こうした変化を経た同社が今、主要課題の1つとして掲げているのが、女性リーダー比率の拡大だ。
「13年に策定した長期計画『KWN2021』では、21年に女性リーダーの比率を策定時の3倍となる12.0%へ引き上げる目標を打ち出しています。現時点で8.4%ですが、今ちょうど30代半ばの人たちがリーダーになり始め、さまざまな施策が奏功していると感じます」(堤本さん)
同社で多様性推進に携わる豊福美咲さんは、若手女性への「前倒しのキャリア形成」が、女性リーダーの礎を築く布石になっていると話す。
「女性社員には入社後すぐから少し上の先輩がやっている仕事を任せ、早い段階で得意領域を持ってもらおうという試みです。ライフイベントを迎える前に成功体験を積んでおけば、ライフイベントで中断しても自信を持って復帰できますし、職場も戻ってくる安心感がありますよね」
現実にキャリアデザインやライフイベントに悩み始めた年齢層には、個別に相談できる適格な先輩を会社がマッチングしてくれるメンタリングプログラムも用意されている。
さらに、14年からはプロフェッショナルなビジネスパーソンの育成をめざす研修プログラムとして、「キリンウィメンズカレッジ」を開催。入社6年目から35歳未満の25人を対象に半年間、社外から講師を招いてビジネススキルを学ぶ。
「参加は手上げ制で、応募文の提出とリーダーの推薦状が必要です。グループ会社からも広く参加できるので、狭き門のうえにかなりハードなプログラム。会社も力を入れており、実際にこのカレッジを卒業した女性管理職も増えています」(豊福さん)
施策と意識改革、両輪での推進が鍵
培ったキャリアを断絶させないためには、時間や場所にとらわれずに働ける環境(制度)も重要だ。同社はこれまでにもKWNの提言のもと、ワークライフバランスサポート休暇制度、キャリアリターン制度、在宅勤務制度、別居結婚への支援(月1回の交通費補助)、転勤回避措置制度などのさまざまな制度を新設してきた。特徴的なのは全国転勤が前提の社員・家族を支える制度が多様なこと。結婚しても転勤で別居になる可能性もあるからだ。
「出産・育児、介護、本人・家族の病気を事由に一定期間、転勤を回避できる転勤回避措置制度は、共働き世帯の男性の取得者も少なくありません」(堤本さん)
こうした制度を利用すると、処遇に影響したり昇進が遅れたりすると思われがちだが、堤本さんによれば「一切関係ない」のだそう。また、希望地復帰支援制度という新しい施策も20年4月の復帰時から適用になるという(キリンビールのみ)。