転職活動は「私はどう生きたいのか」を見つめ直すきっかけのひとつ

子育てとの両立や時短勤務を通して、自分の働き方を模索してきた小林さんにとって、次なるミッションは「女の転職」と向き合うことだ。2018年7月からは『女の転職type』編集長を務め、サイト内の開発・企画を担っている。そこでは自身の体験がいかに活かされているのか。

「女の転職では、『育児と両立OK』な求人かどうかや産育休の活用事例、『女性管理職有』など、女性が働きやすい環境を全求人で必ずチェックしています。基本的には独自に取材をし、女性が活躍するにあたって必要な情報をちゃんと聞いて掲載する誠実さを大事にしています。社風が分かるよう写真が多いのも特徴ですね」

編集記事では、自分らしい働き方を実現している女性たちのインタビューやアンケートなども載せている。そもそも転職を考える女性たちに、ちょっとでも立ち止まって仕事の在り方を見直してもらうようなコンテンツ作りを心がけてきた。さらに未経験者でもエンジニアのようなプログラミング体験ができるセミナーを開催。今、エンジニア系の求人は引きも切らず、これからも伸びていくマーケットと言われているので、選択肢を増やしてもらうための取り組みだ。

女性の場合は出産を機に退職し、子育てが落ち着いてから再就職を目指す人。育休後の異動なのでキャリアに悩み、転職を考える人も少なくないが、やはり家庭や子どものことを思うと不安も大きいだろう。小林さんは自分の体験も踏まえて、女性の転職をこう捉えている。

「まずは自分がどう生きたいかを見つめ直してみる。スキルがなければ新たに学んでみるのもいいし、やりたいことに向かう手段もとれるでしょう。そこが曖昧なままだと諦めてしまいがちですし、人生ただ生きていてもいろいろあるので、流されてしまいがちです。主語を『私は』にして、自分が本当にやりたいことと向き合うことが大切だと思います」

実は自身も将来のキャリアを描けず、転職を思い悩んだ時期があった。そこで本当にやりたいことを見つめ直し、上司にきちっと話すことで希望する仕事への異動がかなえられたという。だからこそサイトを通して「自分がやりたいことを明確にして動いてみては?」と女性たちの背中を押す。

歌代 幸子(うたしろ・ゆきこ)
ノンフィクションライター

1964年新潟県生まれ。学習院大学卒業後、出版社の編集者を経て、ノンフィクションライターに。スポーツ、人物ルポルタ―ジュ、事件取材など幅広く執筆活動を行っている。著書に、『音羽「お受験」殺人』、『精子提供―父親を知らない子どもたち』、『一冊の本をあなたに―3・11絵本プロジェクトいわての物語』、『慶應幼稚舎の流儀』、『100歳の秘訣』、『鏡の中のいわさきちひろ』など。