夫に協力してもらい「とことんやる」と決めた

さらに2年近く産育休を取っている間、社内の配置も大きく変化していた。かつて部下だったメンバーが昇進し、同僚が上司になっている。その成長ぶりを目の当たりにすると、自分だけが後退しているようで焦りも覚えた。当時は時短勤務の管理職も少なく、その先のキャリアも見えてこなかったからだ。ならばいかに責務を果たし、自分の存在価値を築けるのかを考え続けた。

「やっぱり自分が納得できる成果を出さなければと思ったんです。そのためには、勤務時間内で無理そうなことは誰かに任せ、人に頼るところは頼る。自分がやりたいときには夫に協力してもらってとことんやると、腹をくくって仕事に挑みました」

新卒採用で初の試みとなるインターンシップの立ち上げも、チームメンバーだけでなく、部署全体を巻き込み、成果に徹底的にこだわって目標を大きく達成できた。翌年には、はじめての異動を経験。Webマガジン編集部で、webマガジン「Woman type」の編集長に就任。数年ぶりに、ラインマネジメントにも復帰した。

一方、家庭でもどんどん図々しくなってと、苦笑する小林さん。最初は夫に誓約書を書いてもらい、「週一回は保育園へ送りに行く」など細かなことから頼む。そこから少しずつ話し合い、食器の片付けやお風呂掃除など家事も分担するようにした。今では家事はほぼ半々。「夫は家事能力が高いと気づいた」と笑う。

「自由になれる」ことを知ったはじめての一人旅

子どもが3歳になったころ、海外への一人旅も実現したそうだ。会社では2週間の休暇をとって海外で研修できる制度があり、小林さんが企画したテーマは「バルトの女たち」。バルト三国のひとつ、エストニアにはキフヌ島という小さな島があり、男性が漁に出かけている間に女性たちが独自の文化を築いている。そんな女性たちに興味を惹かれ、一人で訪れてみたかったのだという。

「一人旅もはじめてで、子どもがいたって自由になれるんだと。誰のママでも、誰の奥さんでも、誰の上司でも部下でもなく、ただ私自身がそこにいて、体ひとつでよく頑張ってきたなと世界の果てでしみじみ思えた。今でも忘れない貴重な体験です」

二人目の子どもを出産したのは2016年夏。半年後には復職し、編集の現場へ。その後、新しいオウンドメディアの編集長や、メディアの統合など新しい仕事へのチャレンジを重ねた。

「月並みですが、仕事の難しさを子供が癒してくれて、子育てのストレスを仕事で発散できる。両方大変だけど、両方楽しいとやっと思えるようになりました」