SNSから大量の子育て情報が流れ込んでくる

でも今は、度重なる児童の事件で、子どもだけで行動することを心配する親御さんが増えました。何かあればすぐ親のせいにするような、おかしな自己責任論が広がって、親のほうも神経がピリピリしています。

また、放課後にグラウンドを開放しない小学校も増え、子どもの遊び場が限られるようになりました。そこに、中学受験熱の高まりも加わり、塾や新しいタイプの習い事で、小学生の放課後の過ごし方が大きく変わりました。

今の時代で親をやっていると、気持ちの面でも物理的にもめちゃくちゃ忙しいのです。

さらに今は、ネットニュースやSNSでありとあらゆる子育て情報が流れてきます。

「習い事は、勉強系とスポーツ系と芸術系をそれぞれやらせたほうがいいらしい」
「理系に強くなるには、小さいころからロボット教室に通わせたほうがいいらしい」
「中学受験をするなら、3年生の2月から塾通いが始まると言うけれど、大手進学塾のSAPIXの人気校舎に入れるなら、1年生から入れておかないと上位クラスに上がりにくいらしい」

など、“やらせたほうがよさそうなもの”“やらせないと自分たちだけが取り残されそうなもの”の情報がたくさん飛び込んできます。

すると「うちはこのままでいいのだろうか?」「もっと、何かやらせたほうがいいのではないだろうか?」と焦りや負い目を感じるようになります。情報がたくさんあることによって、かえって子育てがしづらくなっているのです。

今の子育ては「選択肢」が多すぎる

さらに、お母さんたちを不安な気持ちにさせるのは、今の時代の子育ては選択肢が多いことです。

お母さんたちが小学生だったころは、小学校を卒業すると、地元の公立中学に通い、15歳の高校受験で初めて「受験」を経験する子がほとんどだったと思います。今も地方ではそれが一般的ですが、東京都の文京区や世田谷区など、首都圏の一部の地域では4人に1人が、学区によっては8割以上の子が中学受験をすると言われる時代。「自分は公立中学出身だから、この子も公立中学でいいのでは?」と安易に言えない状況になっています。

かつて中学受験といえば、とび抜けて教育熱心なご家庭や、キリスト教校に入れたいなどのこだわりを持った一部のご家庭が選択するものでした。ところが今は、公立中学への不信感や大学受験への優位性などから、多くのご家庭が中学受験に関心を寄せています。

経済的に厳しいとあきらめていたご家庭でも、十数年前に公立中高一貫校が誕生したことで、教育費の負担を抑えて、6年一貫のカリキュラムが受けられるようにもなりました。

また、これまではある一部の裕福なご家庭だけの世界というイメージだった小学校受験においても、一般家庭の受験が増えています。かつて小学校受験といえば、平日に幼児教室に通わせることが必須で、専業主婦のお母さんのいる家庭でなければ難しいと言われていましたが、今は共働き家庭も多いそうです。