人の知性は多様で「メリハリ」がある

人間の能力は、出来の悪い人からいい人まで並べることができて、頭のいい人は間違えないけれども、ダメな人はしばしばミスをする。そんなイメージを抱いている人は多いのではないか。

どんな分野のエキスパートにも「弘法にも筆の誤り」は起こりうる。(PIXTA=写真)

しかし、実際には、人の知性はもっと多様で、「メリハリ」がある。突き抜けて賢い人の中には、拍子抜けするほどぼんやりとしている側面があるようだ。

アレクサンドル・グロタンディークは、ドイツ生まれの20世紀の数学者。数学の中でも最も高度で基礎的な分野の研究に生涯取り組んだ。

グロタンディークが数学に導入したのが「スキーム」ないしは「概型」と呼ばれる概念で、代数幾何学や数論において応用されている。グロタンディークはトポス、ホモロジー代数、数論幾何などの分野に取り組んだほか、ヴェイユ予想の研究に貢献した。

以上を読んでもさっぱりわからないと思うかもしれないけれども、抽象数学を論じること自体が目的ではないので安心してほしい。いずれにせよ、グロタンディークが、20世紀最大の天才数学者の1人であるということは、多くの人に認められているところである。数学界最高の栄誉である「フィールズ賞」も受けている。