入社すぐ、電話で詰問されつづけた日々
2007年にサイバーエージェントへ亀井さんはインターネット広告事業本部で営業職に就いた。創業10年目の社内はベンチャー精神にあふれ、新入社員もすぐに独り立ちしてクライアントの担当を任される。だが、希望はたちまちしぼんでいった。
インターネット広告の効果は時間単位で数字に表されるだけに、シビアな世界だ。経験も実力もない自分はどうしたらお客さまに価値を提供できるのか……試行錯誤の日々が続く。なかなか広告効果を出せず、毎日のようにお客さまから電話で詰問される。数カ月は電話一本かけるのもびくびくしていた。
「うまく受け答えができず、『日本語、わかります?』と聞かれたことも。お客さまは20歳くらい年上で男性の方が多かったので、相当怖かったです」と亀井さんは苦笑る。
それでも先輩たちの協力を得ながら、幾度もプランを練り直す。4カ月ほどで広告効果を出すことができ、クライアントから増額を受けた。そうした成功体験の積み重ねが自信になり、入社4年目にはチームリーダーに。前任のリーダーは3歳上の先輩でコミュニケーション能力が高く、ガッツある営業マン。そんな先輩とのギャップやお客さまとのキャリアに圧倒的な差を感じ、あとを引き継ぐプレッシャーも大きかったが、女性だからこそ気づける細やかな対応を心がけた。
部下に本音を見せられず、チームの信頼関係が崩壊…
2011年には管理職になり、全社で選ばれるベストマネージャー賞を受賞。その年には営業局長に就任し、絶好調でスタートを切った矢先、いきなり壁にぶつかってしまう。半年も経たないうちに担当するクライアントでトラブルが続出。その渦中で、持ち前の責任感がむしろ裏目に出ることになった。
「周りに相談できないタイプというか、悩みを話すのが苦手なんです。本当はめちゃめちゃ気にするし、弱いところもあるんですけどね。もっと早めに相談して、組織で課題解決に動けばいいのに、自分で何とかしようとして一人で抱え込んでしまう。だから報告するタイミングが遅くなり、完全に火を噴いた状況で周りを巻き込むことになるので、上司にもかなりお叱りをいただきました」
何より辛かったのは、チームでの信頼関係も崩れていくことだった。本音で話し合えないリーダーにはメンバーの不満もたまっていく。管理職としての課題は、まず自分自身を変えることから始めた。メンバーにはいつでも本音で話し、頼るべきところは任せるようにする。その結果、「自分も楽になり、メンバーとの距離が近くなりました」という亀井さん。そんなチームだからこそ、皆で乗り越えられた試練があった。