広告だけでは解決できない課題に議論を重ねた
ちょうど営業局長になって間もないころ、担当するクライアントから3カ年の中期計画に向けた提案依頼を受けた。その企業は「現時点では(金融業界の)マーケット5位に入るか、入らないかというところだが、3年後には業界1位を目指したい」という目標を掲げ、達成するための提案をするというものだ。
最初に依頼を受けたときは内心、無謀な計画としか思えず、現状のプロモーションだけでは達成できないことが確実に見えていた。競合する大手広告代理店は全員男性で30、40代のベテラン勢で臨むが、自社はわずか4、5人の若手チームである。しかも相対する企業側の部長は新任で広告の編場を知らず、サイバーエージェントへの信用も希薄だった。チームをまとめる亀井さんの責務は重かった。
「私たちのミッションは広告効果をいかに出すかですが、この仕事は広告だけではどうにもならないような難題でした。それでも自分たちに何ができるだろうとメンバーと必死で考え、お客さまとも何度も議論しました。インターネット事業に関する勉強会や他社が掴めない情報を提供することに努め、だんだんコミュニケーションをとれるようになっていったのです」
部下にも体験してほしい「人生に刻まれる仕事」
3年後には「業界1位」を達成することができた。その後、亀井さんは担当を外れ、しばらくしてクライアント先の部長も異動が決まる。その際、自社まで挨拶に出向いてくれた部長を、〈○○さん、ありがとうございました〉と書いた手作りの張り紙で迎え、色紙を贈った。すると、最後に部長から「サイバーエージェントと仕事した数年は、社会人歴30年近いなかでいちばん楽しくて貴重な時間であり、自分が亡くなるときに思い出すと思う。それくらい貴重な時間でした」とねぎらいの言葉をもらう。それを聞いたメンバーの目も潤んでいたという。
「お客さまにとっても、その人生に刻まれるような仕事をご一緒できることは嬉しいこと。今は自分の大切なメンバーにもぜひ体験してほしいと思っています」