部下を信頼し、組織で課題解決を目指す

入社時から一貫してインターネット広告事業本部で営業に携わってきた亀井さん。その間、仕事と向き合う原点に立ち返る苦境も経験していた。まさに営業本部を統括する局長に就任したころのこと。大きな誤配信があって、数時間ほどで会社に多額の損益をもたらすことになったという。

トラブルが発覚したのは、ある朝メンバーから届いたメッセンジャーツールのメッセージがきっかけだった。前日夕方から夜にかけてネット上で広告を運用していたメンバーから、配信した金額の報告を受け、数字がひと桁違っていることに気づく。亀井さんは直ちに出社して対応し、上司にすぐ報告した。すると当時、広告事業本部の責任者である岡本専務は部下のミスをとがめることもなく、その指示は潔いものだった。

「まずは『お客さまにとって最善の対応をしてほしい』という話をされたんです。できるだけ自社の利益が下がらないようなやり方というのではなく、大事なお客さまのために自分たちができることを尽くすのだと」

それは亀井さんも仕事と向き合うなかで最も大切にしてきたことだ。会社に大きな損失をもたらした責任を感じ、どんな判断をも受ける覚悟をしていたが、上司はメンバーを信頼して対応をゆだねてくれた。ならば、同じミスを繰り返さないようにするためにはどうしたらいいか、今後に向けてチームで徹底的に話し合った。

「メンバーをすごく信頼しているので、組織としてどう課題解決していくのかというところを心がけています。私もマネジメントラインになると、お客さまとの距離はどうしても離れてしまう。やっぱりメンバーこそがいちばん近いところでがんばってくれているので、今はチーム一つになってお客さまのビジネスの成功に貢献できることが楽しいですね」

そんな亀井さんが率いるチームは11人。関西出身の亀井さんはもともとお世話好きで、きょうだいや友だちの面倒見も良かったらしい。今は社内でも「おかん」と慕われる存在のようだ。

歌代 幸子(うたしろ・ゆきこ)
ノンフィクションライター

1964年新潟県生まれ。学習院大学卒業後、出版社の編集者を経て、ノンフィクションライターに。スポーツ、人物ルポルタ―ジュ、事件取材など幅広く執筆活動を行っている。著書に、『音羽「お受験」殺人』、『精子提供―父親を知らない子どもたち』、『一冊の本をあなたに―3・11絵本プロジェクトいわての物語』、『慶應幼稚舎の流儀』、『100歳の秘訣』、『鏡の中のいわさきちひろ』など。